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Radio Handbook 16th Edition

William I. Orr, W6SAI (Editor)
1962
Editors and Engineers, Ltd.


アマチュア無線技術の集大成

    ARRL発行のAmateur Radio Handbook(日本国内通称アマハン)が今も昔もアマチュア無線家の座右の書であるのは疑いがありませんが、 このRadio Handbookも忘れてはいけません。 電子工学の基礎、電子回路、送信機と受信機の技術、 電波伝播や空中線などの項目が詳しく解説されているのはアマハンと同様。 ですがこの本はアマチュア局の運用や法規についてはほとんど触れられておらず、 そのかわり技術面に関して全808ページで非常にくわしく述べられています。 数式を多用した理論書ではなくアマチュアへの応用を主眼に置して書かれており、 アマチュア無線技術の集大成といえるでしょう。

    1962年版のこの第16版を眺めるとその時代がよくわかります。 真空管式通信機はその絶頂期にあり、一方でトランジスタの実用性がますます増大して小信号回路に応用され始めています。 SSBへの恐れや反対はしだいに減り、AMは急速にSSBに移行しつつあります。 全トランジスタ式コンピュータが実用になってはいるもののアマチュアが触れられるものではなく、 デジタル通信といえるのはせいぜいRTTYであり、それも簡単に紹介されているだけ。 かたわらアナログコンピュータも絶滅してはいません。

    受信機の章にはアマハンと同様にいくつかの受信機の製作例が載っています。 受信機ファンとして一番気になるのは記事中最も高級な受信機。 1962年にハイエンド・アマチュアはどんな受信機を組み立てていたのでしょうか? 記事の中から「DXオペレータ向け高級受信機」を以下にご紹介します。
    次の版、17th EditionにはTed Crosby氏 (W6TC/SK)による有名な"HBR"受信機が登場します。 このころは自作受信機の黄金時代でもあった、といえるでしょう。
Radio Handbook 16th Edition

DX Communication Receiver

DX用高性能受信機

    A Deluxe Receiver for the DX Operator と題されたこの受信機は80メーターバンドから10メーターバンドまでの6バンドをカバーする、 15球ダブルスーパーヘテロダイン機です。 「費用はさほどかからず、特殊なツールなしに一般のアマチュアが自作することができ、 SSBやCW受信に不可欠な高い安定性と選択度をもち、強力な隣接局にも混変調を起こすことのない高性能受信機」 を目指して設計されています。

    水晶発振による第1局発、可変第2局発と100kHzクリスタルキャリブレータおよび15MHzのWWV受信機能によりダイヤルを較正でき、 正確な周波数読み取りを可能にしています。 コリンズ メカニカル フィルタとQマルチの組み合わせによる最高レベルの選択度、 SSBとCW受信のためのプロダクト検波回路、 SSBの音声特性を十分に考えたAGC回路を持っています。
DX Communications Receiver - Click here for larger image

回路構成

高周波増幅回路

    6DC6セミリモート カットオフ 5極管を用い、 最高レベルの耐混変調特性を得ています。 つづくミキサー段でのコンバータ ノイズを上回るよう、 高周波増幅段はAGC制御を受けず常にフルゲインで動作します。これにより良好なSN比を得ています。

第1周波数変換

    6BJ6をホット・カソード接続で使用した水晶発振回路の出力と高周波増幅段の出力は6AH6で混合されます。 ローノイズ化のために6AH6は3極管接続されています。

第1中間周波増幅

    2.4から2.9メガサイクルの第1中間周波数信号は6BJ6で中間周波増幅されます。 この段はAGC制御され、 またカソード バイアスをポテンショメータで変化させることによるマニュアル ゲイン コントロールを受けます。

第2周波数変換

    6BE6ペンタグリッド コンバータによる自励式の周波数変換段です。 第2局発周波数はフロントパネルのチューニングつまみでバリコンを回すことにより可変されます。

第2中間周波増幅

    455kHzの第2中間周波数信号は3.0kHz(SSB時)もしくは0.5kHz(CW時)のコリンズ メカニカル フィルタを通り、 初段第2中間周波増幅管6AH6に入ります。 この管はセンターおよびノッチ デプスを調整できるQマルチの機能を持ちます。
    後段第2中間周波増幅は6BJ6で行われます。 第2中間周波数増幅段の2球も第1中間周波数増幅段とおなじくAGC制御を受け、 またマニュアル ゲイン コントロールを受けます。

Block Diagram - click here for PDF
BFOとハイブリッド ディテクタ

    6BE6ペンタグリッド管が、 プロダクト検波とダイオード検波を兼ねるハイブリッド ディテクタとして使われています。
    SSBおよびCWの受信時はBFO管6BJ6の出力が第1グリッドに印加され、第2中間周波信号が第3グリッドに印加されます。 AM受信時はBFO管は停止し、 第3グリッドは20kΩを介してグラウンドに落とされ、中間周波信号は第1グリッドに印加されます。
    BFO周波数はミゼット バリコンで可変できLSB/USBに対応できるほか、 BFO出力は6BJ6のプレートからポテンショメータを用いて取り出されるので注入信号レベルを可変することができます。

AGC

    初段第2中間周波増幅管の出力は後段の6BJ6とは別の6BJ6にも導かれます。 これはAGC回路専用の中間周波増幅段であり、バッファとしても作用します。 これにより、AGC動作は検波段へのBFO注入の影響を全く受けません。 6BJ6の出力はトリプル2極管6BC7と双3極管12AU7の片側を用いたハングAGC回路に導かれます。 話し始めの子音が過大入力でひずんでしまうのを防ぐためのファースト・アタック特性、 信号がなくなっても0.5秒ほどゲインを低減させたままにするハング特性、 その後比較的ゆっくりとゲインを回復するスロー・リリース特性、 そして入力信号がある程度にならないとAGCが効き始めないディレイ特性の全てを兼ね備えています。

DX Receiver Back View
Sメータ

    双3極管12AU7の片側を用いたSメータ アンプは、 AGC回路の出力電圧、すなわちAGC制御電圧の変化を指示します。 この受信機はAGCを手動で無効にすることができますが、その際にもこのSメータは通常どおり作動します。

低周波増幅・音声出力

    初段低周波増幅は双三極管12AU6の片側、音声出力は6AK6で行われます。 6AK6の入力回路には1N34ゲルマニウム ダイオードを2本使用したノイズリミッタがあり、 フロントパネルのスイッチでリミッタON-OFFを切り替えます。 ダイオードのバイアス電圧を得るために1.5Vの電池が2個使用されているのがおもしろいところです。

電源回路とスタンバイ動作

    B電源はシリコンダイオードで両波整流され、 放電安定管で安定化された150Vが用いられます。 本機のスタンバイ スイッチはすべてのB電源を遮断し、 真空管のヒータだけを点灯させておく仕組みになっています。 本機背面にはブレークイン端子が用意されていて受信機動作を停止できますが、 これはマニュアル ゲイン コントロール ライン、 すなわち中間周波増幅管のカソード バイアスを極端に高くして受信回路をカットオフさせるものです。


こちらは最近の23th Edition

    こうしてみると、実に魅力的な受信機です。 自作機とはいいながらたとえば コリンズ75S-1 などよりも複雑な設計ということができ、 特に真空管3本分を奮発したAGC回路などはぜひ味わってみたいものです。 エディストーン社製のダイヤルを用いたパネル、サブシャーシ方式の採用など機構面でもすばらしく、 こんな受信機を自分で作れたらなあ・・・とため息がでてしまいました。


Thank you, Bill...

SB SPCL @ ARL $ARLX003
ARLX003 Amateur Radio Giant Bill Orr, W6SAI, SK

ZCZC AX03
QST de W1AW
Special Bulletin 3 ARLX003
From ARRL Headquarters
Newington CT January 26, 2001
To all radio amateurs

SB SPCL ARL ARLX003
ARLX003 Amateur Radio Giant Bill Orr, W6SAI, SK

Amateur Radio legend William I. ''Bill'' Orr, W6SAI, of Menlo Park, California, died in his sleep January 24. He was 81.

An ARRL member, Orr was best known for his numerous amateur radiobooks and reference works, many aimed at beginners. His titles include The Radio Handbook, The Beam Antenna Handbook, The Quad Antenna Handbook, The VHF-UHF Manual and The W6SAI HF Antenna Handbook, some written in collaboration with Stu Cowan, W2LX.

Licensed in 1934 at age 15 as W2HCE in New York, Orr graduated in electrical engineering from the University of California in the early 1940s.

In his younger years, Orr was a well-known DXer and DXCC Honor Roll member. He also was involved in DXpeditions to various exotic locations, including St Pierre and Miquelon and Monaco, among other locales.

From the 1940s through the 1980s, Orr was a frequent contributor to QST, writing about tube-type amplifiers, Project OSCAR, and other topics. Orr constructed some of the amplifiers once used at ARRL Maxim Memorial Station W1AW.

For many years Orr worked with tube manufacturer EIMAC. Orr's application notes for EIMAC products were favorite reading within the amateur community. In later years, Orr penned columns for Ham Radio magazine and, more recently, for CQ.

In 1996, Orr was named the Dayton Hamvention Technical Excellence award winner.

Chip Margelli, K7JA, of Yaesu, said Orr's readers always could build his projects knowing that Orr had tested them in the field first to be sure they worked.

Long-time friend Willard ''Tiff'' Tiffany, W6GNX, said Orr had a knack for making technical topics easy to follow and understand. He remembered Orr as ''a friendly, helpful guy who wrote from the heart because he enjoyed doing it.''

Another friend, Marv Gonsior, W6FR, says Orr ''had a great sense of humor, a lot of wit about him.''

Orr owned a condominium in Maui, Hawaii, and operated from there two or three times a year as KH6ADR.

Orr's wife, Sunny, died about five years ago, and he lived alone. He is survived by four daughters and a son. Arrangements are incomplete at this time.

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Feb. 23, 2000 Created.
Mar. 04, 2000 Revised and published.
Jan. 27, 2001 Added ARRL Bulletin, W6SAI/SK.
Aug. 17, 2002 Reformatted.
Feb. 23, 2007 Reformatted.