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Radio Operators Handbook I.C.S. Radio Operators Handbook

A Handbook of Reference
for Those Interested in the Radio Art

by International Correspondence Schools,
Scranton, PA.

1st Edition, 10th Thousand, 2d impression
International Textbook Company 1923
ハンドブック

    ハンドブックと名づけられた本はたいていの場合とても手のひらには収まりません。 が、80年前に出版されたこの本はご覧の通り、文字通りのハンドブック。 とても可愛らしいサイズと装丁です。 内容はこのサイズにもかかわらず薄手の紙で全514ページ、文字も小さめなので情報量はたっぷり。
    発行元である International Correspondence Schools は、技術を身につけてより高収入を目指したい社会人のための通信教育を行っていたようです。

    本書の内容は、数式や理論解説もありますが、もっぱら無線通信に使用される機器の原理や使用方法と回路の動作説明になっています。 この本には目次がなく、そのかわり冒頭にはアルファベット順の索引が設けられています。 本書の構成を右に示しました。

    送信機のチャプターでは、高周波発電機の出力端子の一方をそのままアンテナに、もう一方をアースにしただけの回路から始まります。 ついでブザーを直列同調回路に入れたもの。 送信機の多くは高周波発電機式やスパーク・ギャップ式で、電子回路というよりむしろ機械式送信機といった趣があります。
    真空管発振器を使用した1球の送信機が後半に出てきますが、キーイングは同調回路のコイルを何ターンかキーでショートする方式。 つまりキーを押していないときは目的周波数とは別の周波数で電波が出たままになっています。 解説には「真空管発振回路のどこかにキーを入れて断続させる方式ではどうしても発振が不安定になってしまうので、 この方式がベストである。ただしキーを押していないときも違う周波数で電波が出てしまうので妨害の原因になりうるが。」とあります。 うーん、のんびり。

    電話送信機についても、最初に出てくるのはアンテナ回路に直列にカーボンマイクを入れただけのもの。 何種類か掲載されている送信機の最後に登場するのが2球式の電話送信機。 1球がキャリア発振で、もう一方が変調管。 これらの2本の真空管のプレート電源は同じB電源から取られており、2球が並列に接続されています。 カーボンマイクからの音声信号を受けた変調管のプレート電流は音声波形によって増減します。 プレート電源には大きな鉄心入りコイルが入っているため2球トータルのプレート電流を一定に保とうとします。 したがって変調管のプレート電流が増加すればその分発振管のプレート電流は減り、 また変調管のプレート電流が減少すればその分発振管のプレート電流が増加します。 このため、発振管の出力は音声信号に応じた強弱をもつこととなり、結果として音声による振幅変調がかかります。 これは定電流変調、日本ではよくハイシング変調と呼ばれている方式です。 簡単な構成で実現できますが、 深い変調度と安定動作を両立させることは困難で、理想的なAM変調にはまだまだ遠い方式です。

    受信機もまた、非常にプリミティブ。 最初に出てくるのは、ヘッドフォンの片側の端子を鉱石検波器を介してアンテナに、もう一方をアースにつないだだけ。 同調回路すらありません。 同調回路を有する構成の多くが直列同調を使っており、バリコンよりもバリオカップラーに同調操作の重点が置かれています。 どのようなコイルをどのように結ぶか、が当時の回路技術の粋であったようです。
    中盤のいくつかの回路は、Undamped Waveと呼ばれる、真空管式CW送信機からの信号を受信する方法。 電波が受信できているときにだけ音を出すために、さまざまな断続回路が掲載されています。
    受信機チャプターの後半では、商用市販受信機の紹介があります。 Grebe type CR-8 は、真空管を1本使った同調・検波ユニット(チューナーユニット)と、 真空管を2本使った低周波増幅ユニットの組み合わせ。再生検波方式で、 プレートとグリッド回路にバリオメーターを、またアンテナ回路にパリオカップラーを持っています。 ボリュームコントロールはなく、必要があればそれぞれの真空管のフィラメントレオスタットを調整します。
    面白いのはヘッドフォンを挿し込むジャックが3つ用意されていること。 一番左側のジャックにプラグを挿し込むと、低周波増幅用の2本の真空管のフィラメントは通電されず、 検波管だけが動作しその出力がヘッドフォンにつながります。 真ん中のジャックにプラグを挿し込むと一段目の低周波増幅間が動作してその出力を聞くことができ、 一番右のジャックを使うと2段目の低周波増幅管を含め全段動作になります。 この仕組みにより、電池の消耗を最低限に抑えることができます。
    受信機チャプターの最後はアームストロングによる超再生方式。2球式と3球式の回路が紹介されています。 ここでもフォード製自動車の点火コイルを使用する例が言及されています。

    どの受信機にしても一般ユーザが家庭用として使える代物ではなく、専門知識を有したオペレータでなくては使いこなせなさそうです。 一方でその回路規模は学研マイキット並でしかありません。

本書の構成

Electrical Terms
Electric Circuits
Oscillating Circuits
Antenna Systems
Electric Batteries
Generators And Motors
Miscellaneous Radio Devices
Electron Tubes
Transmitting Stations
Radio Receiving Circuits
Amplifiers
Filters
Wavemeters
Commercial Receiving Sets
Radio Experiments
Electrical and Radio Fomulas
Codes
Conventional Symbols
Definitions of Radio Terms
Radio License Regulatons
Tentative Regulations
Tables and Data


アマチュア無線のライセンスをとろう

    本書の最後の部分は無線局を運用するための免許制度と安全のための法規が掲載されています。 それによると、第1級アマチュア無線局の免許を取得するには5文字からなる単語を国際モールス符号で1分間に10個送受信できる技量があれればよく、筆記試験はなし。 ライセンスを取得すれば、200メートル以下の任意の波長で (1.5MHz以上のすべての周波数で) 終段入力1キロワットまで運用することができます。 なんとすばらしい!!! でも受信機の感度が現代の1000分の1程度しかなかったとすれば・・・20ワット出せる現代の4級アマチュアのほうが幸せかもね。


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Copyright(C) NoobowSystems Lab. Tomioka, Japan 2004, 2007

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Sep. 23, 2004 Created.
Dec. 26, 2004 Revised and published.
Dec. 31, 2007 Updated.