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Origin of "0-V-2" Nomenclature

"0-V-2"表記の起源

そういえば0-V-2って

    2006年が明けて元旦、今年は何をして楽しもうかなあ。 そうだ、もう一度0-V-2でも作ってみようかな。 1975年1月、私の科学教材社プラグインコイル式0-V-2キットは無事に組立を終え、鳴り出しました。 が、短波帯の実用性能は低く、7MHzのアマチュア帯が良好に受信できた記憶はありません。 ひょっとして何か間違いがあったのか? いまならもう少し追いかけられるかも。

    プライベートな時間は相変わらず取れないから、やっぱりお手軽にキットで楽しもうかな、 それとも今度は原理から勉強しなおすために完全自作にしてみようかな。 ちょっと手元の資料を拾い読みし始めて、ふと気づきました。 アメリカの本には"0-V-2"の言葉は一切出てこない!!

    最近日本では何冊もの真空管ラジオ自作の入門書が発行され、それらのどれにも、 必ずと言っていいほど0-V-1や0-V-2が登場します。 ところがアメリカの本には、1930年代の本にも最近刊行されたホビイスト向けの本も、 1球または2球の再生式受信機の記事は数多くありますが、 それらは0-V-1とか0-V-2とかとは呼ばれていないのです。 急に気になりだしてしまいました。 0-V-2式の形式呼称は、いったいいつごろから使われているんだろう? 誰が言い出したのだろうか? それともこれは日本独自の呼び方なのだろうか?

ドイツ起源説

    "0-V-1" "0-V-2" といったキーワードでウェブをサーチすると、ヒットするページの多くは日本かドイツのもの。 後発国であった日本の無線通信用語のほとんどは欧米起源ですが、 アメリカでは1930年代終り頃には再生式あるいはオートダインはアマチュアの自作機ですら過去のものとなり、 スーパーヘテロダイン化が完了していました。 すると、"0-V-2"はドイツ起源? 第2次世界大戦以前、同盟国時代にドイツからもたらされた技術用語なのかも知れません。

英国起源説

    一方で真ん中の"V"とはなにか? 私が最初に勉強した頃・・・1970年代の日本の初心者向けラジオ雑誌には「真ん中は検波段を表し、ここに真空管が使用されていることをVで表す」 という旨で書かれていたと思います。 "V"とは"Valve"の意味・・・ でもまてよ、アメリカでは真空管は通常は"Tube"であり、"Valve"と呼ぶのは英国。 ひょっとして"0-V-2"式は英国起源? その用語がドイツにもたらされ、その後日本に。 当の英国では廃れてしまったものの、同盟国圏ではそのまま普及していった・・・ という可能性はないでしょうか? たしかに、ドイツ起源ならValveではなくてRöhreの意味で"0-R-2"となりそうなものです。 ドイツ語での「検波段」はDetektorだし。

大ベテランの方々でさえ

    この素朴な疑問を、真空管ラジオの大ベテランの方々が集まるコミュニティで質問してみました。 が、みなさん「そういえば・・・知らないなあ」。 大ベテランの方々にとっても「すでにそういう習わしになっていた」ようで、 誰が言い出した、とか、いつごろから使われ始めた、という情報にはめぐり合えませんでした。 しかしどなたも、「そういわれてみればアメリカでは0-V-2とは言わないよね」というのは一致したところで、 私の勘違いではありません。

    まあ、どうだっていいっちゃいいんだけどね。 なんでクルマのハンドルはハンドルなんだろ? アメリカではステアリングホイールだしドイツではレンクラードって言うんだけどな。 アメリカではクラッチというけれどドイツではカップルング。 でも・・・気になるなあ。

    些細な事ながら気になる理由は、私のサイトはできるだけ(といってもまだわずかですが)英文併記にしたいと思っているため、 もしこの語が日本独自なのであれば注記を入れるべきだと思うからです。 他の例は「BCLラジオ」で、これは日本語です。 直訳して"B.C.L. Radio"とやっては理解してもらえないでしょう。 "B.C.L."という語はいまから60年前に死語になっているのですから。

年表作戦

    手持ちの文献で、いつのものに0-V-2式表記が使われているか、あるいはいないかを年表式に示してみましょう。 なにかのヒントがあるかも。 でもラボにはそんなに古い日本の書籍はありません。 皆さんのご協力が得られたら幸いです。

YEAR NATION ARTICLE DESCRIPTION REMARKS
1926 U.S. The Radio Amateur's Handbook (ARRL) (受信機の主流は再生式だが0-V-2の表記は出てこない)
1932 U.K. Eddystone Shortwave Manual 1932-1933 (受信機の主流は再生式だが0-V-2の表記は出てこない)
1937? U.K. Eddystone Shortwave Manual 1937? (受信機の主流は再生式だが0-V-2の表記は出てこない)
1940 Germany Vom Geblich zum Ozean Alles hõrt der Radiomann (1940年版の復刻) 小学生向けのラジオ実験教材Radiomannのマニュアル。 エレクトロニクスの基礎から1球式受信機までをカバーしているが、 0-V-2的表記はなし。
1947 JAPAN ラジオ アマチュア 第7号 P4 「SW入門(II)國民2號型受信機を短波セットに」(ex.J3EM 森 進 氏)の記事中、 「(本機は・・・)又空中線の動揺等に依り受信周波數に影響を及ぼす様な事が無い等、實用上 0-V-2 等より大分優れて居る様である。」
1947 JAPAN ラジオ技術 創刊号/第2号 (0-V-2形式の表記はされていない)
1953 JAPAN ラジオ アマチュア ハンドブック 初版 「標準受信機」のチャプター(ex. J2OS 柴田 俊生氏)で、説明なしにいきなり "0-V-1" が登場。
1954 U.S. Radio Designer's Handbook 4th Edition (t.r.f. と書かれているのみ)
1968 GREAT BRITAIN RSGB-Radio Communication Handbook 「TRF受信機の形式を示すために コードがしばしば使われる 下記抜粋参照
1982 GREAT BRITAIN Valve Radio and Audio Repair Handbook "Some obsolete radio terms which may be encountered in old literature" 古い文献に出てくる、今では使われなくなってしまった用語) のコラムに 記述あり。 「Vはおそらく真空管(Valve)のことを意味するのだと思われるが」
1995 GERMANY Radio Legenden - Strömungen und Wellen VE301を含むドイツの代表的なクラシックラジオを取り上げた写真集。 各ラジオの時代背景を紹介している。 技術紹介もすこしだけあるが、0-V-2形式の言葉はなし。
2005 U.K. The Untimate Quick Referene Guide 2nd Edition "The conventional way of describing these is a number representing the valves in the RF stage, vollowed by a "V" representing the valve detector, followed by another number indicating the valves in the LF or audio stages". (However, in the 1930s Eddystone articles and catalogues, these "0-V-2" style is not seen. I think the "0-V-2" style was later introduced, and this book "QRG" uses it to describe the old sets.)

RSGB - Radio Communication Handbook

    英国版のアマハンであるRadio Communication Handbook 第5版 (1968年) には以下の記述がありました。

RSGB - Radio Communication Handbook, Fourth Edition, 1968
Chapter 1 Principles - The Amateur Receiver (page 1.38)
    英国では0-V-2式呼称は確かに使われていました。

現時点での解


    現時点でまとめると、"0-V-2"形式の用語は:

  • 日本ではすくなくとも大戦直後には使われていた。
  • アメリカではほとんど使われていたのを見ない。
  • 英国でも使われていた。

  • のは明らかです。

        日本に導入されたのはおそらく戦前だったのでしょう。 いつごろだったのか? ドイツ起源なのか英国起源なのか? 調べを進める必要があります。

        いま仮説を立てるなら・・・ 時代がまだスーパーヘテロダインに移行しきっていない1920年代後半に英国で使われ始め、 それが民生機のスーパー化が遅れていたドイツに伝わり、 1933年の日本の国連脱退、1936年の日独防共協定のあたりまでには日本にもたらされていた・・・ というのはどうでしょうか?

        探すべきは、1920年代中盤から1930年代終り頃までの英国とドイツの資料。 日本人でご存知の方がいらっしゃるとすればきっと戦前コールサインのアマチュア、 それも1920年代にお生まれになった超大ベテランの方々・・・。


    0-V-2リンク

        ウェブを調べると、本当に多くの人が0-V-1や0-V-2を自作して楽しんでおられます。 どの機械も工夫があって、オリジナリティがあって、見ているだけで楽しい! のでリンク集を作ってみることにします。 その作業中に0-V-2の起源に行き当たるかも。

    COUNTRY KEYWORD
    The first audion which I really like NL -
    Fun with a Regen Receiver NL -
    Regenetrodyne Receiver NL -
    Secrets of Homebuilt Regenerative Receivers Lindsay Puiblication. この本は読むべきだな。 US -
    How to Build Your First Vacuum Tube Regenerative Receiver Lindsay Puiblication. これも。 US -
    How to Build the Twinplex Regenerative Receiver Lindsay Puiblication. これも。 US -
    History of Radio US -
    On the Shortwaves.com 豊富な資料へのリンク集あり。 US -



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    Jan. 06, 2006 Created.
    Jan. 06, 2008 Updated and published.
    Jan. 09, 2008 Updated.