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Heathkit GR-64

General Coverage Shortwave Receiver Kit
(1964)

[Brief English Translation included in the page]


Heathkit GR-64



Heathkit

    アメリカのアマチュア無線機器キットメーカーとしてあまりに有名なヒースキット社。 受信機、送信機、各種のアクセサリや計測器のキットは多くのアマチュアによって組み立てられました。 現在でも多くのファンがおり、組み立て前の完全パッケージ品などはコレクター間で高額で取り引きされています。

    お店で買ってきた機器をただ操作するだけ、というのはアマチュア無線の本来の姿ではないはず。 完全自作の理想からは遠いかもしれませんが、自分ではんだ付けして組み立てられ、実用になり、 しかも美しいケースをもつヒースキットが親しまれたのも不思議ではありません。 今こういった大手のキットメーカーが存在しないのは、したがって残念でなりません。 (でも最近いくつか、そそられるキットが発売されてますね!)

    ヒースキット社の製品のなかには、しかし、性能・品質的にやはり完成品メーカー機に劣るものもあるようです。 同社の高級受信機キットのレストアを手がけた人が書いたある雑誌記事には、次のようなことが書かれていました。 最初に組み立てた人は受信音質があまりにひどく、「こんなはずはない、絶対何かがおかしい」と、 入念な調整と再度のチェックを試みました。 が、どうにもならず、やがてその受信機は棚の飾りになってしまいます。 その人が亡くなったあとに受信機を受け継いだアマチュアは、 まずインターネットのニュースグループでそのラジオの評判をたずねてみました。 すると彼が得たレスはどれもみな、「こんなひどいものはない」、「私の持っている受信機のなかで最悪の音質」、 「まったく価値なし、置いておくのさえ無駄」と、酷評しているのです。 彼はしたがって、彼のラジオだけがおかしいのではなくて、基本設計自体に問題があることを確信しました。 計測器でチェックしながら回路を再検討した彼は、 オリジナルの回路がどうにも納得できない杜撰なものであるとの結論に達し、 そして大掛かりな変更を始めます。 単なる配線変更や素子の定数変更だけでは間に合わず、シャーシ内にいくつかの半導体を追加しての大改造。 その結果ラジオは見事に美しい音と性能になったとのことです。


Heathkit

    Being a mere equipment operator may not be called a real amateur radio. Completely homebrew will be the goal but a tough challenge. Therefore fine kits such as Heathkit come into play. They will give you practical performance, pleasant finish, and most importantly, experiences and excitement of building equipments by yourself.


Heathkit GR-64

    Heathkit GR-64は、 <Shortwave Receivers Past And Present Second Edition> によれば1964年から1971年までの販売、 定価は当初38ドル。 550kHzから30MHzまでを4バンドでカバーする、4球シングルスーパーヘテロダイン短波受信機です。

    MT管4球とダイオード整流の構成は、真空管時代のエントリーレベル短波受信機最後の世代といえるでしょう。 高周波増幅なし、中間周波増幅1段。 可変BFOは中間周波増幅管12BA6で発振されます。 ANLつき、ANLのON/OFFスイッチは背面にあります。真空管はすべてヒータ電圧12V、電源トランスを有します。 真空管や各種コイルを含むほとんどすべての回路は1枚の紙エポキシ製プリント基板に実装され、 したがって組み立て配線ミスは少なかったものと思われます。 ケース左側にスピーカをもち、ヘッドフォンジャックは背面。電源スイッチはボリューム・コントロールと兼用です。

    同調は2連バリコンを糸掛け駆動、ダイヤルはご覧のとおり大型の横行きタイプ。 CDマークは入っていません。 バンドスプレッドは小型バリコンを同軸シャフトで減速駆動し、ダイヤル盤左側の縦行きダイヤルを糸掛け駆動しています。 ダイヤル盤右側にはラジケータ・タイプのSメータ。





Heathkit GR-64

    GR-64 was sold between 1964 and 1971, according to the book "Shortwave Receivers Past and Present". It is a 4 tubes single superhet covers from 550kHz to 30MHz with 4 bands.
    Its configuration may be the final generation of vacuum tube entry class receiver. It has a power transformer, and most of the components are mounted on a paper epoxy printed circuit board.

使用真空管と回路構成

    トランスレスではないので低周波増幅管にも12V球が使用されていますが、 12BE6/12BA6/12AV6の組み合わせはまさに 1950〜60年代の家庭用ラジオ そのもの。 B電源電圧がトランスレス方式に比べて高く取れるとはいえ、所詮は5球スーパー。 通信機級の性能を求めるのは酷というものでしょう。 ラジオの原理を学び、通信型受信機の雰囲気を味わい、遠い国からの電波にワクワクする。 それだけできれば、エントリー機として最も重要な任務を果たしていると言えると思います。

V1 12BE6 周波数変換
V2 12BA6 中間周波数増幅・BFO
V3 12AV6 検波 / AGC / ANL / 初段低周波増幅
V4 12AQ5 低周波出力

半導体ダイオード 整流


    戦後の入門用5球スーパー短波受信機の代表格といえば ハリクラフターズS-38シリーズ ですが、S-38シリーズは1961年に4球のS-120に置き換えられ、 それも1964年にはラインアップから姿を消しています。 ヒースキットGR-64はその1964年のデビューとのことですから、 少年向けエントリー機の立ち位置をS-38から受け継いだといえるかもしれません。





レストアはいつの日か

    この時代のエントリー機はフレア・マーケットでも数多く見受けられますが、 いかんせん子供向けの入門機ですから雑に取り扱われたものが多く、 年代が新しい割には美品は逆に少なくなっています。

    このGR-64もまた美品とは言い難く、何時間たっても売れないのをみて安く買ってきました。 一通りのものはついているのですが、フロント・パネルの飾り部品は壊れかかり、 ボール紙製リヤパネルはおそらく雨に当たってよれよれ、 ケースにはヘンテコなロータリースイッチが追加されていました。 バンドセレクトノブも壊れかかっています。

    簡単なチェックと清掃のあとに通電。 真空管はすべて生きており、動作しました。 が、感度は情けないものです。トラッキングも完全に狂っており、中波放送バンドも部分的にしか受信できません。 しばらく調整コアをつつきましたが、らちがあきません。 おそらく各素子の定数が変化してしまっているのでしょう。

    BFOも使いづらく、簡単に異常発振を始めてしまいます。 片側2個所でしか固定されていないスピーカは音質が悪いだけではなくて、 シャーシ各部との間でひどいビビリ音を出してしまいます。 糸掛けのダイヤルはメイン・バンドスプレッドとも最悪の操作フィーリングで、 これまた全体的に手を加える必要があります。

    こんな様子ですから、レストアはかなり時間と根気が要りそうですが、 プロジェクトのプライオリティ・リストの中では限りなく下のほう。 で、すでに3年以上も、ラボの片隅で復活の日を待ちわびています。


Waiting to be Fixed

    Entry models of this era are often on sale at flea markets but many of them are in poor condition. This GR-64 was not an exception. All components were in place but decorative parts of the front panel were broken, back panel was deformed, and a strange knob was added on the top cover. The price of my unit was accordingly cheap.

    Quick check found that all of the tubes were alive and the radio played. However the sensitivity was quite miserable. Dial movement was very bad. Restoring this unit was considered as lowest priority in my task list, and the unit had been waiting more than 3 years at the corner of the lab.

持ってきちゃった

    シリコンバレーから日本に帰国する際、問題だったのがラボの機材。 なにしろ量が多いので、不要品は処分せねばなりません。 真空管ラジオ類の中で数を減らすとしたらこのGR-64は第一候補でした。 が、引っ越し業者さんに見積もってもらったら、なんとか規定量に収まりますよ、とのこと。 ならば、二束三文のポンコツとはいえ捨てることもありますまい。 で、GR-64は4畳半ラボに連れてこられたのでした。

    このGR-64はトラッキング調整を取り直すのが最大の課題。 ですが、小学生のとき6石スーパーのキットを組み立てたものの調整がどうしても取れず、 大変くやしい思いをしたことがいまだにトラウマになっているのです。 ですからこのGR-64の修理は、その心の傷を癒すための再チャレンジ。 ううむ、失敗したら二度と立ち直れないかもしれない・・・。

    この受信機の回路図はマニュアルをオーダーすれば手に入るのでしょうが、今のところ手に入れていません。 そもそもまじめにいじるかどうかわからなかったということと、 見たところごく一般的な回路であるように思えたのでパターンを追えば回路図は書き起こせるだろうと考えたためです。

    で、なんとか受信できているVOAニュース・ナウを聴きながら、のんびりとつつき始めることにしました。

1999-06-12 サービス開始






低周波出力段

    例によって、低周波出力段からじっくり眺めてみます。 パワー・アンプには12AQ5が使われており、CDプレーヤの信号をグリッドに注入すると十分な音量で動作します。 が、低音はかなり押さえられています。 短波ラジオとして使うのに問題はありませんが、私の常用ラジオにするのならもっと低音を出して高音を押さえたいところ。

    シャーシ背面には標準モノラル ヘッドホン ジャックが用意されており、プラグを挿し込むとスピーカへの出力は切断されます。 ヘッドホン出力には抵抗等は入っていないので、スピーカをつなぐこともできます。

    現状ではオーディオ用ヘッドホンを使ってしまうとヒスノイズが気になりますので、やはり高音はもうすこしカットしたいところです。 Lafayette HA-230 ほど顕著ではありませんが、ヘッドホンだとハムもはっきり残っているのがわかります。 VOAニュース・ナウはそもそもいい音とはいえません(デジタル歪があるようです・・・)が、 ドイチェ・ヴェレの日本語放送を聞けば、このラジオは案外いい音をしていることがわかります (*2)。

    このラジオを入手したときには、ケース上面にロータリースイッチが追加されていました。 配線は寸断されていましたが、 どうやらシャーシ背面に手を回してヘッドホン プラグを挿し込むのが面倒だった前オーナーが、 挿し込みっぱなしのヘッドホンとスピーカを切り替えられるように工夫したもののようです。 確かに、ヘッドホン ジャックが背面にある、というのは非人間的です。 あ、そうか、これは外部スピーカ端子だと考えれば腹が立たないや。

(*2) 残念です・・・

1999-06-12 音声出力段テスト




Audio Stage

    As usual, the audio stage was tested first. No problem was found and the amplifier worked nicely.



中間周波トランス調整

    Lodestar SG-4162AD シグナル・ジェネレータ を使って455kHzを12BE6に注入し、中間周波トランスのチューニングを確認してみました。 調整が大幅に狂っているというようなことはなく、ほぼ正常といえます。





IFT Alignment

    455kHz signal from a signal generator was injected to the 12BE6 and the IFT alignment was checked. They were well aligned already and seemed to be normal.

バンドDでの周波数ダイヤルの正確さ

    短波帯の約9.5MHzから30MHz以上までをカバーするDバンドで、ダイヤル表示と実際の受信周波数とを比較してみました。 するとダイヤルの両端を除けばおおむね100kHz程度の誤差に収まっています。 このクラスではほぼOKといえるでしょう。 ところが他のバンドでは無残に狂いまくっています。


Dial Accuracy

    Dial accuracy of the band-D was fairly normal, error was less than 100kHz except at the extreme edge of the dial. Other bands however, showed very large error.

スタンバイ動作

    フロントパネルの AM-STBY-CW スイッチは、名前とは裏腹にBFO回路とは全く関係がありません。 このつまみを CW ポジションにすると、AGCラインがグラウンドに落とされて全段フルゲイン状態になります。 つまりこのスイッチはAVC-STBY-MVC と表記するべきものでしょう。

    CW(MVC)ポジションは、BFOを動作させたときにAGCが作動して受信機全体の感度を下げてしまうことへの対策です。 しかしこの受信機にはRFあるいはIFゲインコントロールはありませんから、 AGCを止めているときに強力な局を受信するとオーバーロードしてしまって問題となります。 そんな場合はアンテナ入力にアッテネータでも入れるしかありません。

    信号が微弱でノイズフロアに近い局を受信するとき、 CWポジションにしてAGCを止めるとわずかながら受信感度が改善されます。 ディレイドAGCではないので、 AGCはほぼ無信号レベルの場合でもわずかに効いてしまって受信機の感度をわずかながらスポイルしてしまっているのです。

    AM-STBY-CWスイッチをSTBYポジションにすると、中間周波増幅管12BA6のカソードが切り離されて受信動作が停止します。 ここで気になったのが、その配線。 12BA6のカソード ターミナルはすぐ近くの69Ωと0.02μFのパラ接続を通った後に被覆電線で引き出され、 約15cmほどシャーシ内を這い回り、AM-STBY-CWロータリースイッチのターミナルにつながります。 STBYポジション以外のとき、つまり通常動作中は、ここでシャーシに落とされます。 引き回されている線は別の線とツイストペアになっていて、片側だけ12BA6のすぐ近くでアースに落とされています。 引き回しが長いような気がするのですが、どうなのでしょうか。

    このラジオにはトランシーブ動作用のリモートコントロール・ターミナルはありません。 まあ1960年も半ばに差し掛かったこの時代、 入門者といえども4球スーパーで実際にアマチュア局を運用した人は多くはなかったんじゃないかなあ。






AGC動作とSメータ

    Sメータ(パネル表記はRELATIVE STRENGTH)はパネル右側に配置された、縦置きのラジケータ・タイプ。 メータの機械的ゼロは上側です。 メータの動きは無信号時に下側(つまりメータ印加電圧はプラス最大)、 信号が強まるにつれ上側(つまりメータ印加電圧ゼロ)に振れます。

    電源を投入すると、しばらくメータ指針は上側のままで、5秒程度たつと針がぴょんと下側に飛びます。 これは電源投入直後にメータにマイナス電圧が印加されて指針が上側に機械的に引っかかってしまい、 真空管が動作し始めてある程度のプラス電圧がかかるまで引っかかったままになっているためです。

    Sメータは、AGC制御されている中間周波数増幅管 V2(12BA6) のスクリーングリッド電圧を測定するようになっています。 実際にはブリッジ回路になっていて、動作中のSメータ両端の端子電圧はそれぞれ大体110Vから120V程度。 電源投入直後は240Vにも達しますので、Sメータだからといってむき出しのターミナルに触れば飛び上がりそう。

    電源投入直後はスクリーングリッドに電流は流れず、メータ印加電圧(ターミナル間の電圧差)はマイナス約6V。 したがってメータ指針は上側振り切れとなります。 真空管が動作を開始すると、メータ印加電圧はおおよそプラス4.5V程度となり、ほぼ下側いっぱいの位置を示します。 受信信号が強まるにつれメータ印加電圧は下がり、針は上に動きます。 シグナルジェネレータ直結のような極端な強信号ではマイナス1Vを越えることもあり、この場合針は逆振れの状態です。

    無信号時のメータ指針の位置、すなわち12BA6のスクリーングリッド電圧は、 メインダイヤルの位置によって少し変動します。 この原因は不明 (後日判明しました)。

    AM-STBY-CWスイッチをSTBYにすると、すなわち12BA6のカソードを開放にすると、 メータ両端の電圧はともにおおよそ180V程度まで上がり、メータの針が下側に振り切れたままになります。

    Sメータ回路には、ゼロ点やゲインの調整用トリマのようなものは一切用意されていません。

    強力な局を受信すればSメータは振れますから、AGCは動作しています。が、針の振れはかなり速いものです。 基板の上にはAVCとシルク印刷されたテストピンがあり、 ここの信号をオシロスコープで見てみると音声波形がはっきりと重畳しています。 それもそのはず、ここは検波回路の出力そのものであって、フィルタ後のAGC制御電圧ではありません。 中間周波増幅段入力側の中間周波トランス2次側巻線の電圧を12BA6のグリッドにつながっているピンの反対側で測ってみると、 AGC制御電圧には音声信号はほとんど乗っておらず、信号強度に応じて正常な挙動を示しています。

    Sメータの振れが速い(AGCの時定数が小さい)のはフィルタキャパシタの容量が減ってしまったためかもしれません。 とりあえずは問題にならないレベルですが、 回路図を書き起こしてAGCフィルタキャパシタがどれだか判明したらフィルタをすこし重くしてみることにしましょう。






バンド スプレッド

    フロント パネル左側のつまみがバンド スプレッドで、同軸減速シャフトで減速されて小型バリコンを回転させます。 バリコンシャフトに取り付けられたホイールから糸掛けドライブで縦行きのダイヤル指針を動かします。

    構造からすればつまみとバリコンの間には糸掛けはありませんから、スムースなチューニングが期待できます。 が、実際には同軸減速シャフトに明らかなバックラッシュがあって、同一周波数へのダイヤル指針位置の再現性は失望させられてしまいます。 この減速機構の分解は不可能なようす。 軽く注油してみましたが、グニャリとした感触のバックラッシュはなくなりません。

    バリコンは360度フリーに回転するタイプではなく、180度で止まります。 つまみを3+3/4回転するとバリコンが180度動きますから、減速比は1:7.5であるといえます。 メイン ダイヤルが 15MHz付近にセットされているとき、バンド スプレッド ダイヤルは約330kHzをカバーします。

    バンドスプレッドダイヤル指針が上いっぱい、"SET" の表示がある位置でバンドスプレッド バリコンはフルオープンの状態。 つまみを反時計方向に回すにつれ指針は下側に動き、バリコンは閉じていきます。 ロータ/ステータともに2枚羽根のこのバリコンは単バリコンで、メイン バリコンの局発側ユニットに並列につながっているだけです。 つまりバンド スプレッドは局部発振周波数を微調するだけで、アンテナ側同調回路は手付かず。 まあ、エントリー機といえばそれまでですが。



Band Spread

    Band spread is a single tuning cap, which only varies the local oscillator frequency; antenna tuning circuit is unchanged.
    Coaxial reduction drive gives poor touch, lubrication did not help. Location of this tuning capacitor is not optimal either; it requires long wire to connect main- and band spread- tuning cap.


メイン チューニング メカニズム

    メイン チューニングは普通の糸掛け式、可動範囲17.5cmの横行きダイヤルです。 メイン バリコンのドライブ シャフトには、ギア減速機構が設けられています。 直径約6.5cmの小ぶりなドライブ ホイールながら必要な減速比を確保するため、このギア減速が必要だったのでしょう。

    メイン チューニングつまみをゆっくり回しながらこの部分をよく観察すると、 この小さなギアのかみ合い部分でバックラッシュが発生しています。

    ドライブ シャフトはこの減速機構部分だけで片持ち支持されています。 チューニングするたびに、大した力ではないとはいえドライブ ホイールをダイヤルコードが回そうとし、 したがって短いスパンしかない片持ち支持部にはそれなりの曲げモーメントがかかっているはずです。 機械的に弱いこの構造が、ギアの本来のバックラッシュに加えて、 チューニング動作のフィーリングを悪くしているといえるでしょう。

    バンド スプレッドと同様に、軽い注油程度では全く改善されませんでした。 となると、ダイヤル フィーリング改善は大改造が必要ということになってしまいます。 このラジオを使っていて、バックラッシュのないスムースなチューニングが短波受信機にとって、 むしろ感度の善し悪しよりも重要であるということを痛感しました。 同じエントリーレベル機でありながら何年も エコーフォンEC-1A を愛用していたのも、考えてみればダイヤルフィーリングが素晴らしかったからだということに気がつきました。




Main Tuning Mechanism

    Main tuning capacitor employs a built-in reduction drive with an anti-backlash gear.
    However the mechanical stiffness of this part is quite insufficient, and obvious backlash results. Lubrication does not help at all; improving the smoothness requires full modification....

BFO

    フロントパネルにはBFOと書かれたつまみがあります。 これは中間周波数増幅管12BA6(リモートカットオフ5極管)のサプレッサグリッドとグラウンドの間に入ったポテンショメータです。 反時計方向いっぱい、OFFと表示された位置にあわせると、 ポテンショメータの抵抗値はゼロになってサプレッサグリッドは接地されます。 これが通常のAM受信状態です。 ポテンショメータを時計方向に回していくと、信号強度にもよりますが、 おおむね40%から50%の位置で中間周波増幅管は発振状態になります。 これにより中間周波数増幅管はBFOとして動作し、CWの受信が可能になります。

    しかしながら(これが正常なのか故障なのか不明ですが)、このBFO動作は大変不安定です。 AM放送を受信中にBFOつまみの位置を上げていくと、きれいなビート音の代わりに、 大きな音量で聞き苦しいバズ音が「ぼわぁ〜っっっ」と出ます。 この音はオーディオボリュームを下げると消えます。 どうやらスピーカ出力に応じてB電圧が変動し、 それに応じ発振状態が変わってしまうためにひどいフィードバックがかかっているようです。 外部スピーカを使用していて発生するので、マイクロフォニックによるハウリングではありません。

    バズ音が出ない程度にBFOつまみを調整すると、確かに発振気味になっているのでBFOらしき動作をします。 BFOをフルの位置にすると、常時、しかし不安定な、ひどいバズ音になってしまいます。 なんともみっともない動作です。

    こんな状態なので、聞こえているAM放送に対してBFOをかけてゼロビートをとってみる、というのはほぼ不可能です。 果敢にもアマチュアバンドで実際のCWを聴こうとしてみましたが、受信音はピヨピヨと情けないもので、 ビート周波数は絶えずふらふらしてしまっています。 バンド・スプレッドのバックラッシュとあいまって、SSBの復調は数分間トライしたものの断念しました。





BFO

    The IF amplifier tube 12BA6 also works as BFO. The BFO knob controls a potentiometer connected to the 12BA6 suppressor grid and the ground. By increasing the resistance of the control, the 12BA6 starts to oscillate. The AM-STBY-CW switch shall be set to CW so that the AGC becomes inactive.

ANL

    ノイズ・リミッタのスイッチは背面パネルにあります (なんで・・・?) 。 ONにすると、AMラジオの音質から電話の音質へ程度の劣化が感じられます。

    部屋の蛍光灯を点灯するとGR-64からはかなり大きなノイズがバリバリと聞こえますが、 ANLをONにすればノイズの大きさは明らかに小さくなります。 が、現在のラボでの状態では常時ANLをONにしておく必要性は感じられません。


ANL

    ANL switch is located on the back panel. I wonder why....
    Audio quality deteriorates quite a bit with ANL ON, although the impulse noise can be reduced.

周波数ドリフト

    高崎のジャンク屋さんでシグナルジェネレータを買いました。 半年前に新品で買った 台湾性の安物ジェネレータ よりも安い値段で手に入ったのはなんとあの超ブランド、目黒電波測器製。 0.1kHzまでデジタル表示でどんぴしゃりのこのジェネレータをさっそく使って、 GR-64の周波数ドリフトの傾向を調べましょう。

    結果はグラフのとおり。 テストした周波数はバンドDの15.150kHz。 電源投入直後にこの信号に受信機をゼロインさせ、 その後受信機には触れずにジェネレータ側の周波数を変化させてその変動分をプロットしてみたものです。 ゼロインしているかどうかはGR-64のSメータから判断したため、測定の精度は0.5kHz程度です。 まあ、アマチュアのお気軽実験だからお許しあれ。 で、グラフからわかるとおり、GR-64は電源投入直後実に約2時間にわたってドリフトし、16kHz動いたあと安定します。 夏の夕方のアパート最上階での測定ですから(つまり「コールド」時の温度が摂氏34度!)、 冬はもっとひどくなる可能性もあります。 SSBやCWの受信では頭を掻きむしって血が流れることになりますが、 短波ニュース番組を聞くのであればときどきダイヤルを触ればなんとかなるので、 エントリーモデルのご愛敬として我慢しましょう。

    次の日にも試しましたが、ドリフト量はまったく同じ16kHz。 変化傾向は安定しているようですから温度補償キャパシタの追加等で改善できる可能性もあります。 が、はたしてそこまでやるかどうか・・・。

    比較のため (と手に入れたばかりのジェネレータ自体の変動レベルを知るため)に、 コリンズ51S-1 でも同様の測定を行ってみました。 こちらは受信機をCWモードにし、ゼロビートでゼロインを判断しましたので0.1kHz程度の精度がでているはずです。 違いは一目瞭然。51S-1では電源投入して1分待ってからゼロインすれば、その後のドリフトはほぼありません。 このレベルでは、51S-1とシグナルジェネレータのどちらがドリフトしているのかもはや判定できません。 さすがコリンズ!

    上の実験を行ったのと同じバンドD(9.5MHzから30MHzをカバー)でも、 22MHzでテストしてみたらドリフト量は実に31kHzにも及びました。 感度の悪さはさておいても、21MHz帯のアマチュアバンドを聞くというのは絶望的です。
1999-08-01 バンドD 周波数ドリフト測定





Frequency Drift

    By using newly acquired standard signal generator, frequency drift was measured. On 15MHz, the drift continued 2 hours, shifted 16kHz. Need to touch the tuning knob quite often in order to continue monitoring a shortwave broadcast station.
    On 22MHz, as much as 31kHz drift was observed; receiving SSB or CW on 21MHz band is impractical.


うるさい受信機

    このラジオを聞いていると、ノイズレベルがかなり高いことに気がつきます。 Sメータを半分以上振らす程度の、それなりに強力な信号の場合であっても、音声にザーッといったノイズがかなり混じってしまいます。 おそらくコンバータノイズでしょう。 フルクワイエットな状態になるためには、ローカル放送局並みの強力な信号レベルが必要です。

    6BE6系のペンタグリッドコンバータはかなりノイジーだという話を聞きます。 いくつかの本によればこのコンバータノイズ対策のひとつは、 高周波増幅段を追加してコンバータへの入力信号レベルを高める方法。 そりゃごもっともですが・・・。 お手軽に済ますにはプリアンプを利用することでしょうか?

    コンバータノイズはまだ我慢できるとしても、 ピューッといった感じの発信音が小さいながら受信音の中に混ざることがあります。 これはちょうどBFOのビート音のようにゼロインするとゼロビートになり、 離調するにつれて発振音が高くなっていきます。 なにかのスプリアスなのでしょう。 さらにこの弱いビート音は、絶えずヒョロピョロと周波数がふらつくのです。 こちらのほうがコンバータノイズよりも耳障りで、気にしだすと気になりつづける類のものです。

    弱いビート音の周波数がふらつく最大の原因は、 局部発振周波数が機械的振動でわずかに変動してしまうためであることがわかりました。 そしてそれは、バンドスプレッドバリコンの接続ワイヤが原因でした。 このワイヤは全長20cmの硬めの単線ビニール被覆ワイヤで、 バンドスプレッドバリコンからシャーシ下をくぐって メインバリコンの局発側ユニットのステータからの線に接続されています。

    このワイヤは両端以外には固定されておらず、わずかな機械的振動でぶらぶら揺れます。 そしてこのワイヤが揺れると、 近くにあるバンドセレクタへのリード線やシャーシとの距離が変わって局部発振周波数をわずかに変動させるのです。 このワイヤの取り回しを変えれば、周波数の機械的安定性は向上するでしょう。

    エコーフォンEC-1A ハリクラフターズS-38C では、 バンドスプレッドバリコンとメインバリコンを一体にすることにより、 同じようなエントリー機でありながら (そして20年前の設計なのに!) この問題を抜本的に解決しています。

    バンドスプレッドバリコンの接続ワイヤをメインバリコン側で切り離してみると、 周波数はふらつかなくなったものの、同調時の弱いビート音は相変わらず出ています。 ひょっとしたらと思い、すでに記した中間周波数増幅管12BA6の配線−スタンバイ動作のためのカソードと、 BFO動作のためのサプレッサグリッドの引き回し−を、いずれも最短距離でグラウンドに落とすよう変更してみました。 残念ながらビート音は相変わらず出ていますが、ノイズが減ったように思えます。 スタンバイ機能もショボいBFOもしばらくは使いませんから、このままテストを続けてみましょう。


Noisy Receiver

    This receiver was extremely noisy. Unless the signal was quite strong, excessive hiss noise was present. Obviously this was caused by the pentagrid converter, and it was too much. Also the reception sound always associated with unstable beat note.
    Unstableness of the beat note was caused by the wiring to the band spread tuning capacitor. Slightest mechanical vibration made the wire to swing, and it changed the local oscillator frequency.
    Rewiring the cable with different route did not help. The band spread tuning capacitor was located far away from the main tuning, thus such wiring was necessary. This is not a good design; the Echophone EC-1A, for example, uses a combined tuning cap thus eliminating such problem, although it was designed 20 years before.

局部発振周波数共振回路

    出力段から前段に向かって回路図を書き起こしていき、中間周波増幅段までほぼ回路が見えてきました。 そろそろ周波数変換段、問題のダイヤルアライメントにいよいよ手を出す段階となりました。 まずは中波を受信する、バンドAから始めます。

    バンドAではダイヤルの動きに対して実際の受信周波数の変化量が少なくなっています。 バリコンの動きに対して、局部発振周波数の変化量が足らないわけです。 調整個所としてはバンドA用のオシレータコイルのコアと、バンドA用のトリマキャパシタがあります。 が、この2つをどういじってもトラッキングをとることができません。 で、局部発振の同調回路の配線を追いかけてみました。

    すると、バンドA/B/Cの場合それぞれに対応したオシレータコイルがロータリースイッチによって選択されますが、 いずれの場合にもバンドD用のオシレータコイルは直列につながったままなのです。 一方、バンドAの調整にはバンドB/C用のコイルやキャパシタは無関係です。

    こうなると、このラジオの調整手順は通常と異なってまずはバンドDを最初に行うべきでしょう。 で、すでにバンドDは問題なしの状態です。 さあ、バンドAの調整がうまく取れない理由は?


Local Oscillator Tuning Circuit

    In BAND-A, for medium wave, the reception frequency coverage was less than expected. i.e. local oscillator (LO) frequency range was less than necessary. The receiver provides oscillator coil core and trimmer capacitor for BAND-A adjustment, but was unable to adjust with them.
    Further study found that the oscillator coil for BAND-D is always series connected to the other oscillator coils. Therefore, BAND-D must be aligned first. In this receiver the BAND-D is well aligned; so why BAND-A cannot be aligned?

バンドA調整完了!

    キャパシタの経時変化・・・なんとかの一つ覚えですが、 いままで修理してきた故障の多くがキャパシタ劣化あるいは故障に起因するものでしたから、 バンドA用とバンドD用のオシレータコイルをつなぐ350pFのキャパシタを疑います。 プリント基板のシルクにも350μμFと書かれていますから、オリジナル品なのだろうと思われました。 あいにく手持ちに350ぴったりのものはなかったので、330pFを取り付けてみます。 未使用品ですが、製造年となると果たして10年前か20年前か。 ともあれ交換してみましたが、状況に変化はありません。 さらに50pFをパラにつないでみると・・・ バリコンの動きに対する受信周波数の変化量が大きくなりました! オシレータコイルのコアとトリマで、ダイヤル目盛りにほぼ、受信周波数を合わせ込むことができました。 やったぁ。

    キャパシタの容量を測定する装置は持っていないので、部品の表示を信ずるなら取り付けたキャパシタの容量は380pF。 調整後のトリマの位置を見るに、ちょっと大きすぎるようで、370pF程度でもいいのかも知れません。 最初のテストではほぼ変化がなかったことから、 (部品の表示を信ずるなら) オリジナルの350pF (±5%品) は330pF程度にまで容量が減少していたのでしょう。 あるいは当初からこの値だった? もしそうなら、最初このラジオを組み立てたオーナーは一度も満足に調整が出せなかったでしょう。 今となっては知る由もありません。 ともかく、バンドAのダイヤルは今やほぼピッタリ。

1999-08-08 バンドAトラッキング調整完了

BAND-A Alignment Completed!

    There was a 350pF capacitor connecting BAND-A OSC coil and BAND-D OSC coil, and this capacitor was suspected. The notation on the PCB said 350uuF, so this capacitor should be the original one.
    There was no exact 350pF in lab's stock, so a 330pF was installed instead. Result - no change. Next, another 50pF capacitor is added in parallel. Then... frequency change became greater! With OSC coil core and trimmer, BAND-A dial was perfectly aligned.

バンドAでのアンテナ回路

    調整していて、バンドAはバンドDに対して感度が相当悪いことが不可解でした。 アンテナターミナルにつないでいるシグナル・ジェネレータの出力は、 調整が狂っているはずのバンドCでも60dBμ出せばSメータが5程度は振れるのに、 バンドAでは80dBμくらいまで上げる必要があります。 が、この疑問は良く見てみればなんなく解決しました。 バンドAでは、アンテナ端子は使用されないのです!

    バンドB/C/Dはプリントボード上に調整可能なアンテナコイルがありますが、バンドAにはそれがなく、 代わりにボール紙製背面パネルに取り付けられたバーアンテナがアンテナコイルになっています。 シャーシ背面のアンテナ端子の線はバンド切り替えロータリースイッチによって各バンドのアンテナコイルに接続されますが、 バンドAではどこにも接続されず宙ぶらりんです。 ジェネレータの出力をアンテナコイル両端に接続してみたら、60dbμで十分な入力レベルです。 が、劣悪受信環境の我がラボ室内ではAM放送受信はたいていのラジオではまず不可能。 せっかくトラッキングが取れたのに・・・。

    で、今夜はしかたなくシグナルジェネレータの外部変調機能を使ってGR-64でCDオーディオを楽しむことにします。 聴くのは Jim Oliver [外部リンク] の <Harmonic Resonance>。 マウンテンビューのカストロ・ストリートにある古今東西のヒーリング関連グッズを売っているちょっと怪しげな East West というお店で買ったこのCDは、 基本的なサイン波主体のゆったりとしたシンセサイザ音楽で、夜遅くに聴く環境音楽としてうってつけ。 GR-64とかではなくてまともなオーディオシステムを使い、部屋を暗くしてCDプレーヤの出力をオシロスコープにつなぎ、 リサージュ図形を眺めながらヘッドホンで聴けば実にリラックスします。 って結構アブナい世界だなこれは。


BAND-A Antenna Circuit

    It was quite strange that the BAND-A sensitivity was quite poor. By checking the antenna circuit, I discovered that the antenna terminal is not used for the BAND-A circuit. A bar antenna mounted on the rear panel is used for band-A, and the bar antenna works as the antenna coil.
    Band-A performance became good, however the noisy environment of my lab prevented to receive actual AM station. So I hooked up my CD player to the signal generator, and enjoyed music with GR-64.

ひとまず調整完了

    昨晩の成果に気をよくし、バンドBとバンドCについてもチャレンジしてみました。 バンドBはオシレータ・コイルとトリマの調整のみでそれなりに改善され、 バンドCについてはドライバーを回すだけではどうにもならず、バンドAと同様のキャパシタ交換を行いました。 が、こちらは本来の0.002μFに対して0.01μFをパラに接続せねばなりませんでした。 どういう理由でこの狂いが発生しているのか不明ですが、 ともあれダイヤルの読み値をそれなりのレベルで合わせ込むことができました。

    バンドBとバンドCについてはアンテナ回路の調整個所として、それぞれのアンテナコイルのコアと、 小さなトリマキャパシタがあります。 これらの調整により、 それまでダイヤルの位置で大きくばらついていた受信感度をバンド内の広い範囲で比較的均一に得ることができました。

    ノイジーなラボの受信環境ではバンドBは外来雑音だらけですが、以前よりもずっとにぎやかになりました。 バンドCについては、 今や5MHzのJJYと各国際放送バンドでたくさんの局がSメータを大きく振らせながら飛び込んでくるようになりました。 数メートルのビニール線アンテナだけで国際放送を十分に聞くことができ、 これなら プリアンプ を併用する必要性は大幅に低減されます。 GR-64はようやく、5球スーパーとしての感度と分離を取り戻しました。

    シグナル・ジェネレータの出力レベル表示から判断するにバンドCがもっとも感度が良く、次はバンドDの下半分です。 バンドBの感度はCやDに比べかなり劣っているようですが、 現状ではこのバンドで聞くべき局はないのでさらなる改善は今後の課題としておきましょう。




Tracking Completed

    Satisfied with yesterday's result, adjustment of the band-B and C was also performed. Band-B did not require component change. For the Band-C, replacing the original 0.002uF with 0.01uF was necessary. I don't know why such big change was necessary, but the dial accuracy became almost satisfactory.
    Antenna inductor cores and trimmers were adjusted for the band-B and C, and the almost uniform sensitivity was obtained across the dial. Now the receiver performance is as expected from the standard 5 tubes single superhet.

AGC時定数と周波数変換管へのAGC

    AGCの時定数を決定するキャパシタは、0.01μFのセラミックでした。 0.1μFにしたところ緩慢すぎ、0.068μFを使ってほぼ好ましい応答を得ました。 メータの振れが速かったのはキャパシタの劣化による経時劣化ではなくて、オリジナルの味付けであったようです (あるいはAGCチャージ抵抗3.3MΩの抵抗値が小さくなった? これは確かめていません)。

    GR-64では、周波数変換管12BE6も中間周波増幅管12BA6と同様にAGC制御されています。 周波数変換管にAGCをかけると信号強度によって動作に影響を受けるので好ましくない、 と何冊かの本に書かれていましたので、 試しに12BE6にはAGCをかけないようにしてみました。 今のところ目立った不具合はなさそうで、もうすこし様子を見てみましょう。


AGC Time Constant

    AGC filter capacitorr was a 0.01uF ceramic. Replacing this with 0.1uF resulted in too slow. A 0.068uF provided favorable response.
    Frequency converter tube 12BE6 is AGC controlled in GR-64, but some textbooks suggest not to do so in order to make the frequency conversion stable. So modified to disconnect AGC line from 12BE6.

ダイヤル照明

    メインダイヤル、バンドスプレッドダイヤルおよびSメータは、2個のランプで照らされます。 ランプはIS47と書かれたフロスト仕上げのもので、直列に接続されて電源トランスのヒータ巻線で点火されます。 最初はランプは点灯しませんでした。

    ランプホルダをシャーシから取り外してランプ自体をチェックしてみると、2つともフィラメントは断線していません。 不思議に思ってよくチェックしてみると、どう考えても配線が1本 ---下流側ランプとグラウンドを接続する線---がされていないのです。 最初組み立てたビルダーが配線し忘れたのかな? と思いつつ再びランプホルダをシャーシに組み付けてみると・・・ うまく組みつければ、ランプホルダのターミナルと、 ランプホルダ取り付けネジに入れられた卵型ラグを接触させたままネジを締められることがわかりました。 おそらく、このことに気がついた最初のビルダーが配線を省略したのでしょう。

    照明は十分に明るく、まっくらな部屋でも問題なくダイヤルを読むことができます
1999-08-17 ダイヤル照明修理


Dial illumination

    Main dial, band spread dial and S meter is illuminated with 2 lamps. These lamps are series connected and driven by the heater power supply. They did not light first, because the wiring to the ground was not done. Soon I found that, the lamp socket terminal could be directly touched to the chassis without a wire, and the builder of this radio noticed it also. By re-mounting the socket, nice illumination was obtained.

12BE6を取り替えてみると

    GR-64に使用されているペンタグリッドコンバータ12BE6は、 印刷が消えてしまっていてどこのブランドだかわかりません。 見たところ稼働時間は短さそうですが、スペア球と交換してみてどうなるか試してみました。

    レイセオン製の新品が2本と、各社中古球が4本手元にあります。 結果は、案の定というべきか、新品のレイセオン製を使用すると感度があがります。 シグナルジェネレータの出力レベルにしてその差は3dB。 けっこう明らかな差があるものですね。 いっぽうノイズレベルはそれほどの差が見られません。

    中古のRCA球の1本にははっきりとマイクロフォニックがありましたが、 オリジナル球のマイクロフォニックは比較的少ないほうだということもわかりました。 で、もったいないので新品のレイセオン球は箱に戻して、オリジナル球を引き続き使うわけです。


Replacing 12BE6

    Tested another 12BE6 tubes; two new tubes and four used ones. A new Raytheon gave the best sensitivity; 3 dB better than the others. Noise level, however, did not show such difference. One used tube showed obvious microphonic, the original tube didn't. After all, original tube was continued to be used.

Sメータ逆振れ暫定対策

    全体的な感度が大幅に向上し、いまや近隣諸国の強力な電波はSメータを振り切ります。 で、いったん振り切ると、 すでに述べたメータの逆振れによる機械的な引っ掛かりが頻発します。 暫定対策として、小さな整流用シリコンダイオードをメータに直列に入れてみました。 電源投入時や、強力な信号を受信するときにも逆振れはなくなりました。

    が、まれに信号強度が急激に上昇した場合(チューニング中など)、メータには逆電圧はかからないものの、 動きに勢いのついた針がマイナス側に機械的にオーバーシュートしてしまって引っ掛かることがあります。 AGCを多少重くしたのでこれも前よりは良くなっているはずですが。 まあ当分この暫定対策で満足しましょう。 ってことは恒久対策になるってことです。


S meter reverse protection

    Total sensitivity became much greater than before. Once a strong signal was tuned, S meter went full, and the meter pointer sticked mechanically. To prevent this, I inserted a small silicon diode series to the meter.

12BE6の第2・第4グリッド電圧

    実用真空管ハンドブックの6BE6のページにある周波数変換回路のサンプル回路図には、 プレート電圧250V、第2・第4グリッドの電圧が100Vと記入されています。 し、RCA Receiving Tube Manual (RC-25) には第2・第4グリッドの定格電圧は110Vとあります。 で、GR-64実機を測定してみると、プレートは230Vを少し割る程度ですが、第2・第4グリッドの電圧は150V以上。 これは高すぎるのではないでしょうか? また人からもらった初歩のラジオ誌1965年9月号のコラムには、受信音がビートとなる場合は発振電圧が高すぎるか、 発振波形が歪んで高調波が出ているからだ、そんなときは第2・第4グリッドの電圧を下げてみよ、と書かれています。

    実用真空管ハンドブックでのサンプル回路図では第2・第4グリッドに入れる抵抗は20kΩですが、 GR-64実機では12kΩがついています。 基板のシルクにも12kΩとありますからオリジナルでしょう。 では150Vというのは設計者の意図したところなのでしょうか?

    12kΩを取り外して、日本製のかなり古い(たぶん1950年代)、でも未使用品の20kΩに暫定的に換えてみると、 第2・第4グリッドの電圧は99Vとなりました。 20kΩの両端には148Vの電圧がかかっていますので、オームの法則から第2・第4リッドの電流は7.4mA。 RCA Receiving Tube ManualのTypical値6.8mAよりも少し上回っていますがOKでしょう。 この20kΩ抵抗で消費されている電力はほぼ1Wであることもわかります。

    で、この結果どうなったかというと・・・受信音にビート音をともなうケースが減り、ノイズも減ったように感じられます。 従来はSメータを振り切るような強力な信号でもないかぎりノイズや発信音が混じってしまうためリスニングには不向きなものでしたが、 今では弱い信号に対する了解度が向上し、全般的に聞きやすい音になりました。

    もうひとつ気づいた変化は、高い周波数にセットしたときの無信号時のSメータの指示が安定したこと。 変更前は無信号・無音状態であるにも関わらず、バンドDの22MHzあたりから次第にSメータが振れ始め、 30MHzではメータが半分以上振れていました。 第2・第4グリッドの電圧を下げてからはそのようなことは起こっていません。

    当初の挙動の理由は局部発振波形の歪みが原因だったのでしょうか? ともかくこれによって、ハイバンドの感度が明らかに向上しました。 以前はほぼ無音だった27MHz帯でも隣室のテレビのノイズがはっきり聞こえますし、CB無線も聞くことができました。 おそらく以前は、実際には無信号なのにAGCが効いてしまい感度が下げられていたのでしょう。

1999-08-24 周波数変換管スクリーングリッド電圧修正 スプリアスが消え全体的に性能向上


2nd and 4th Grid Voltage of 12BE6

   RCA Receiving Tube Manual suggests to apply 110V for 2nd and 4th grid of 12BE6 pentagrid converter. Measurement of GR-64 showed more than 150V. This is obviously too much. September 1965 issue of "Beginner's Radio" magazine (Japanese) says that if you have beat note associated with the reception sound, it might be caused by the distorted LO waveform, and suggested to make the 2nd/4th grid voltage lower.
    The handbook suggests to use 20kOhm as the grid resistor but GR-64 uses 12kOhm. Is it a designer's intention?

    I replaced the 12kOhm with a 20kOhm; which gave 99V on the 2nd/4th grid. Then... the beat note was gone! Converter noise was also reduced, weak signal was received without being buried to the noise.

    Another benefit was the S meter reading being stabilized. Previously, the S meter went more than a half even though there was no incoming signal, on the higher frequency such as more than 22MHz. Now the S meter zero is stable regardless of the reception frequency.

    This made the 27MHz band usable and CB conversation was heard. Supposedly the distorted LO waveform caused AGC voltage to increase, reduced the receiver gain.

作業一段落

    バンドスプレッドバリコンの配線を、シャーシ内ではなくてシャーシ上面にし、 かつ振動に強くするべくラグ板を追加して支持するようにしてみました。 わずかに良くなったものの、まだシャーシをゆすると局発周波数は変動してしまいます。 まあAMでは問題ないレベルですので、とりあえず現状で妥協することにしましょう。 しかしバンドスプレッドバリコンをもう少しメインバリコンの近くに配置してくれていればよかったのになあ。

    BFOおよびスタンバイ回路の配線をオリジナルの状態に戻してみました。 劣化はあまり見られないので、これもよしとしてシャーシを閉じることにしました。 前に書いたBFOがひどい音を立てる、というのは実は使い方が正しくないことも分かりました。 BFOを使うときは、必ずAM-STBY-CWスイッチをCWポジションにしてAGCを止めなくてはならないのです。 AGCを止めておけば、BFOつまみを70%程度まで上げることによって本来のBFO動作が得られます。 AGCが効いたままだとどうやらフィードバックがかかってみっともない音を出してしまうのでしょう。

    シャシーの底板はスピーカ取り付けも兼ねたL型の板で、金属磨きで磨いておきました。 ゴム足は入手時から欠品していたので、新品のものを取り付けました。 ケースを閉じて、作業一段落、ということにします。


Complete the project for now

    I rewired the band spread cable so that the wire would not swing; became slightly better but the frequency still changed when the chassis was wiggled. Unstable BFO operation was my misuse; AGC has to be OFF (set to CW position) when BFO is used.
    Bottom cover was polished, and missing rubber foot were supplied with new parts. Closed the case, the fixing project was completed.

まとめ

    パディングキャパシタの容量変更を含めたトラッキング調整と、 定格オーバーで使われていた12BE6のスクリーン電圧を修正したことで、 フレアマーケットの売れ残りGR-64は、エントリー機としての電気的性能を取り戻すことができました。 当初の目標は達成されたといえます。 理屈も分からずコアを回しまくって見事に失敗した小学生の頃からのスーパーヘテロダインの調整に対するトラウマも消えそうです。

    取り付け直した内蔵スピーカは当初のようなひどいビビリ音は出さなくなりましたが、 音質的にはやはり誉められたものではなく、 放送を楽しむには低音の出る外部スピーカがぜひとも望まれます。

    実用性の面でもっとも不満なのは、すでに書いていますがダイヤルのバックラッシュ。 いったん別の局を探すと、もとの周波数に戻るのは至難の業。 このダイヤルは短波受信の楽しみを大きくスポイルしてしまっています。 幸いにも今では周波数カウンタつきのシグナルジェネレータがあるので、 今の周波数を知るのも新しい周波数に合わせるのも簡単にできます。

    この受信機はしかし、結局のところは入門機です。 実用性からすれば、十分に強力な国際放送の受信がせいぜいで、 それもノイズの低減を考えればつい外付けプリアンプをONにしてしまいます。 周波数変換段のAGC制御を行わないよう変更してしまったせいもあるでしょうがAGCの効きはいまひとつ。 分離も不満で、近接局が強い場合は苦しいし、ビートも気になります。 スプリアスもイメージ混信も明確。 まあこういった問題点は5球シングルスーパーならばごく普通のことですから、 言い換えればこのGR-64は本来期待される性能が出るようになった、といえます。 なにしろ以前はほとんどなにも聞こえなかったのですから、 Sメータを大きく振らせながら混信してくる隣接局がうるさい、 などと文句が言えるのは幸せなことです。

    GR-64を小学生の頃組み立てたというある人は「Dバンドでは結局なにも聞こえなかった」と書いていましたから、 プリアンプなしでも15MHz帯のVOAやBBCを楽しめる私のGR-64はそれなりに仕上がったといっていいでしょう。

    結局レストア作業としてはたいしたことはしませんでした。 が、特に周波数変換回路に関していままで理解できていなかったこと ---その種類、動作原理、コンバータ・ノイズ、局発の安定性やハーモニックなど--- について、いくつかのテキストブックをじっくり勉強する必要性を私に与えてくれたGR-64は、 実は復活するまでの間に教育器材としての役割を立派に果たしていたのだ、といま気がつきました。

1999-09-19 サービス完了


Project summary

    Replacing the padding capacitor and correcting the 12BE6 screen voltage, this miserable receiver kit regained the performance.
    Audio quality of the built-in speaker is not good so an external speaker is desired in order to enjoy the international broadcast program. Dial backlash spoils the joy of shortwave adventure.
    When the electronic performance is concerned, this receiver is a pure beginner's radio, after all. Sensitivity and selectivity is insufficient, image signal is quite obvious. These weak points, though, are common for a 5 tubes single superhet. In another words, my GR-64 has achieved the performance which we can expect from its configuration. One person recalled that he could not hear anything on band D with his GR-64 when he built it. Mine now pulls in VOA and BBC loudly on 15MHz.
    Modifications required was not significant. But I had to read books and study many things such as frequency converter circuit operation, including types of circuit, converter noise, LO stability and harmonics problems, until the receiver fully regained its performance.... my GR-64 was indeed a great educational/training kit from which I really learned a lot!

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1999-01-23 Created.
1999-07-12 Updated.
1999-07-17 Updated.
1999-97-25 Updated.
1999-08-01 Updated. (Band D Powerup drift measured.)
1999-08-08 Updated. (Band A tracking completed.)
1999-08-17 Updated. (Dial lamp fixed, S meter diode added )
1999-08-24 Updated. (12BE6 screen grid voltage modified.)
1999-09-19 Updated. (project completed.)
2002-07-27 Revised.
2003-08-12 Reformatted.
2003-08-23 Corrected bug.
2003-12-24 Adding English coments. Working.
2004-01-09 English commented version, published.
2006-01-14 Reformatted.
2014-02-02 Updated.
2022-12-06 Updated and Reformatted. [Noobow9200B @ L3]