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National (Panasonic) RF-2200
"Cougar 2200"

Shortwave Receiver
(1974)




National Panasonic RF-2200



小学5年生のドリームマシン

    クーガNo.7 はその特徴的なジャイロアンテナと高感度、中波AMを聞くにはとてもよいラジオでしたが、 音質重視の設計で短波帯では選択度がブロード過ぎて隣接局が十分に分離できないし、 大径チューニングつまみではあるものの減速比が小さくてチューニングは神経を使うし、 なにより一般的な家庭用の3.8〜12MHzの短波1バンドでは短波を十分に楽しむことはできません。 折しも訪れた"BCL"ブーム -- "BCL"という言葉は1930年代の死語であり、 いまでは日本でしか通用しない言葉なのでNoobowSystemsのサイトでは使わないのですが -- の真打ちとして登場したソニースカイセンサー5900とナショナルクーガ2200。 毎朝の牛乳配達で貯めたお金で買ったのはクーガ2200だった・・・ とはすでに ICF-5900Wのページ に書きましたね。

    結婚してすぐに大半の古い機材類を捨てたので、 小学5年生のドリームマシンであったRF-2200もそのとき捨てたものとばかり思っていました。 が、中央研究所が落成して第一研究所に長期保管してあった品物を運び込むと、 その中に2200が。 よう、久しぶりだなあ、元気だったか?

    昨日まで使っていたかのようにすら感じられた2200でしたが、 電源を入れてみるともはやまともには鳴らず。 そのまま部屋の飾りとなり、まもなく他の品物に埋もれて、 場所は分かっているものの再び姿を隠して13年が経過してしまいました。




47年間の課題

    COVID-19の影響で2020年3月27日から基本的に在宅勤務となり、 夢と時空の部屋の整備が進んで、修理課題リストに上がっていた機器類の修理・整備も少しずつ進んできています。 テクトロニクス2230デジタルストレージオシロスコープ の修理が終わり、 つぎの課題は・・・ いよいよRF-2200に着手するか。 小学6年生にはどうにもできなかった問題 -

7MHzSSBのアマチュア無線がほとんど聞こえない

に、47年たってようやく着手、ということになります。



中学生の改造

    内部調査を必要とするのは分かっていましたから、 電源を入れることなくまずケースを開けました。 ケースを閉めるスクリューは3本しか残っていませんでした。 子供のころに何べんも開けたもんなあ。

    ほんとうに久しぶりに手に取ったこのラジオ、子供の頃の思い出がよみがえってきますね。 リアパネルには拙い手作業でジャックが増設されています。 ああそうだ、DC外部電源で動作させたくてDCパワージャックを追加したんだった。 何十年も前のことです、完全に忘れていました。 でもこれは忘れていないぞ・・・電池ボックスの内側にはトグルスイッチが・・・ほら。

    据え置き型の通信型受信機に憧れがあったのでしょうね。 そして通信型受信機といえば、 動作中はダイヤルとSメータが常時ランプで暖かな光で照らされる。 それが欲しくて、ダイヤルランプを常時点灯できるように改造したのでした。 ハンサムなRF-2200のフロントパネルに素人細工は入れたくなくて、 外から見えないここにスイッチを追加したのでした。



    でもダイヤルランプそのものもいじっているというのはすっかり忘れていました。 標準のムギ球では明るさが物足らなかったのでしょうね。 小学校の理科の教材か何かに使われていたものなのでしょうね。 懐かしい形のホルダについた豆電球が、ボンドG-17で取り付けられています。




    もうひとつはパイロットランプ。 これは覚えていました。 フロントパネルのスピーカグリルは小さな穴が整列して空いているタイプですが、 スピーカの開口部以外は小さな穴は貫通していません。 その穴のうち一つに、赤色LEDを組み込んだのでした。 電源OFFのときは、LEDが組み込まれているようには見えません。





目覚め

    まずは全電流を観察するため、基板の電池コンパートメント接続ターミナルに Kenwood PWR18-2TP 安定化電源装置 で6.0Vの電圧を与えました。 ラジオはすぐに反応し、 FMはすぐに鳴り出しました。 全電流は0.06A、フルボリュームで0.4A前後といったところ。 正常とみていいでしょう。

    ボリュームもトーンコントロールも各種スイッチもひどい接触不良が出ていて、 接点洗浄剤をつかってつまみをくるくる回してガリを取り除いていきます。

    まず手始めの状態は:

-- FMラジオの受信は良好。
-- 中波AMラジオはとても感度が悪い。
-- 短波はノイズが聞こえるがダイヤルの動きに全く反応せず。

といった具合です。

    本機の電源は、単1乾電池4本の6Vのほか、AC100V電源回路を内蔵しています。 AC100Vで動作させたところ、全く問題なく動作しました。 ハム音発生も皆無です。 製造後50年近く経っているのに、また長期間非通電保管だったのに、 まったくもって松下電器の電解キャパシタは優秀です。




AMも快調になった

    MW (中波AM) の感度が極端に低かったのはバンド切り替えスライドスイッチの接触不良でした。 バンド切り替えスイッチは回して操作しますが、内部はラックアンドピニオンで駆動されるスライドスイッチです。 接点清浄剤を内部に吹いて、カチカチしばらく回して復活。

    クーガの伝統と言えるのかもしれません、 AMラジオは受信感度がとても良く、また音もとても良いです。 ジャイロアンテナの使い勝手と合わせ、 ローカル局もDX局も、AMラジオを楽しむのであれば間違いなくスカイセンサーではなくてクーガを選びますね。

    本機のイヤホンジャックはアッテネータなしに内蔵スピーカと直接切り替えるものなので、 外部スピーカをつないでいい音で聴くことができます。 低周波段はまだ点検していませんが、 オーディオは十分実用的な性能が出ています。

    目黒MSG-2161シグナルジェネレータで1000kHzのテストAM信号をつくり、 まる一日 在宅勤務のBGMにジャズアレンジを。

2021-08-29 MW受信機能復活




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短波が聴けない理由を追う

    AM(MW)とFMは快調になりましたが、短波は依然として感度がないまま。 外来ノイズに反応していますが、ダイヤルを回しても受信音はほとんど変化せず。 局発が止まってしまっているのかもしれません。

    RF-2200は短波帯ダブルスーパーヘテロダイン、 そしてダブルスーパーヘテロダインがどのようなメリットをもたらすのかは小学5年のときには理解していましたが、 RF-2200の具体的な回路構成は正直言っていままできちんとは理解していませんでした。 MWでジャズアレンジを聴きつつ、ふむふむ言いながら回路図とブロックダイヤグラムを眺めてみます。

    RF-2200は短波帯動作時は第1中間周波数は1.985MHzで、第2中間周波数が455kHz。 メインダイヤルは第1局部発振周波数を変化させ、目的周波数をまず第1中間周波数に落とします。 第1中間周波数はAM周波数変換・AM/FM中間周波増幅を行うIC1 uPC1018 16ピンのAM Converter Input端子に入ります。 IC1の1ピン AM Local Osc端子にはTR19で発振された第2中間周波数が入っており、 ヘテロダインされた第2中間周波数信号はIC1の15ピン AM Converter Output端子から取り出されます。

    もしこのIC1に内蔵されているAMミキサが故障しているとするとちょっとコトだな、 uPC1018なんていまどき手に入るのだろうか・・・と思いましたが、 IC1のAMミキサは、MW受信時にはシングルスーパーヘテロダインの周波数変換段として動作します。 中波AMはきちんと鳴っているのですから、 IC1のAMミキサは故障しておらず、 したがって短波第2周波数変換段も動作しているはずです。 また中波の中間周波数増幅段〜AM検波段は短波受信時は第2中間周波数増幅段〜AM検波段として共通に使われているので、 短波についてもIC1以降は正常に動作しているということになります。




    さあそれじゃあ、第2局部周波数発振回路を見てみますかね。 どこがそれなのかなー、回路図にMW LOCAL OSCとかどこにもないんだけど。

    ふむ、どうやら"SWITCHING"と機能名が書かれたトランジスタTR19、 2SA838が第2局部発振器のようですね。 中波受信時はバリコンのOSCセクションが局発コイルにつながれ、ダイヤル位置に連動して発振周波数が変わります。 短波受信時はバリコンは切り離され、固定周波数で発振する仕組みになっています。 発振器の出力は68Ωの抵抗を介してIC1の1ピン - AM Local OSC端子に注入されています。

    MWは受信できているのですから、トランジスタTR19は正常に動作しています。 写真では、中波1000kHzぴったりを受信しています。 このとき局部発振周波数は1000kHz+455kHzで1445kHzになるはずです。 IC1の1ピンの波形をつい先週復活したばかりの テクトロニクス2230デジタルストレージオシロスコープ で測定してみると、5周期で3.430μsあります。

1 / (3.430 / 5 )= 1.458 MHz = 1458kHz

です。 本当に1458kHzなのか、実際には1445kHzなのか。その差13kHz、1%の差。 このオシロではこの程度の精度でしか測れないのでしょうね。 正確に測るには周波数カウンタを使う必要がありそうです。




    この発振器は短波受信時は第1中間周波数を第2中間周波数に変換するのですから、 おそらく 1.985MHz + 0.455MHz で 2.440MHzで発振しているはず。 バンドセレクタスイッチの接触不良によって、 短波受信時にバリコンのOSCセクション切り離しがうまくいかなかったりしているのかもしれません。 バンドセレクタを短波に切り替えてみると、 IC1 1ピンの信号は右の通り。 4周期で1.652μsかかっているので、

1 / (1.652 / 4 ) = 2.421 MHz

となります。 設計値とは19kHzほどずれていますが、 これもオシロの精度誤差でしょう。

    この周波数は短波であれば6つある短波バンドのどれでも変わりませんし、 ダイヤルを回しても周波数は一定のまま。 第2局部発振器は狙った通りに動作している、といえます。

    発振周波数の安定性はまだ測定していませんが、 この2.440MHz発振回路をより安定な水晶発振回路に置き換えれば、 受信機の安定性の向上に効果があるはずです。 もちろんいちばん動くのは第1局発なのでしょうけれど。

2021-08-29 第2局部発振回路動作確認





聞こえなくなっちゃった

    中波AMは安定して聞こえていたのに、突然無音になる症状が発生してしまいました。 バンドセレクタを切り替えたりチューニングを取り直したりすると一瞬聞こえるようになりますが、 すぐに〜じきに無音になります。 さらに、バリコンのOSCセクションのリード線に軽く触れると音が復活したりします。 むう。 もしIC1 uPC1018の内部故障とかだったらどうしよう。

    低周波段プリアンプ入力をオシロで見てみると、 たしかに音声信号は来ていません。 でも、あれ? 音が出ていないときでも、AM検波回路には音声出力が出続けています。 それに、そうだよ、ダイヤルを回すと信号強度に応じてSメータが振れます。 バンドセレクタスイッチのオーディオ信号切り替えの接触不良かなあ。

    回路図を追ってみて、あれ? 検波段と低周波初段の間に入ったこのスイッチは? ・・・ これ、BFOスイッチだ。

    BFOスイッチをかちゃかちゃ繰り返すと、そのうち音が出るようになりました。 接点復活スプレーをスイッチに内部に噴いて、音は安定し、BFO切り替えも確実にできるようになりました。 なーんだ驚いた。

    RF-2200はCW/SSB受信用にプロダクト検波回路を持っています。 BFOスイッチはBFOのON/OFFを切り替えるだけではなくて、 AM受信時にAM検波回路出力かプロダクト検波回路出力かを選んでオーディオアンプにつなぎます。 接触不良が起きれば音が途切れて当然ですね。

    バンドを切り替えたりチューニングを取り直したりバリコンのOSCセクションに軽く触れると一瞬音が出るというのも説明がつきます。 受信信号強度が急激に変わるとAM検波回路の出力のDC電圧も急激に変わります。 一瞬の後にAGC回路がDC電圧を一定に保つよう制御するのですが、 AGCが応答するまでのごく一瞬、検波出力の電圧がピッと高くなります。 この電圧でスイッチ接触不良部のごく薄い酸化被膜が切れて通電するけれど、 少し経つと接触不良が再発してしまう・・・ということだったようです。 オーディオアンプ初段にはカップリングキャパシタがあってDC電圧はブロックされますが、 このカップリングキャパシタはBFOスイッチを通った後に入っています。 言い換えればBFOスイッチには絶えずごくわずかに直流電流が流れています。 スイッチ接点を酸化から守るには接点にわずかな電流を流しておいた方がいい、と訊きますので、 そういう配慮も入ってそんな配線にしているのでしょうね。 40年以上のあいだほとんど通電されず放置されていれば、その配慮も効き目はなかったわけです。

    もし接触不良がひどく、しかし接点洗浄剤も届かずスイッチを分解できもしないような八方ふさがりの場合は、 電流制限回路つき電源で接点に電流を流して酸化被膜を焼き切るという作戦があり得ます。 永久故障の可能性がある危険な最終手段、でしょうけどね。

2021-08-29 BFOスイッチ接触不良修理



全バンド復活!

    さらにいじっているうちに、短波も鳴り出しました。 短波の6つのサブバンドも、セレクタスイッチをカチャカチャやり、 またバンドセレクタスライドスイッチに接点洗浄剤+接点復活剤をスプレーして、 安定動作状態になりました。 やったね。 目黒MSG-2161で短波帯のAM信号を作り、 一日短波で在宅勤務BGMジャズアレンジを聴きました。

    短波は6つの各サブバンドに同じ傾向でメインダイヤルが0.2MHzほどずれています。 小学生・中学生当時にここまでメインダイヤルがずれていた記憶はありませんので、 長期保管中に素子特性が経時変化した・・・ のでしょう。 おそらくバリコンのオシレータセクションのトリマ調整で校正できるはずです。

    バンドによって傾向の違いがありますが、 トラッキングも完全ではない模様。 トラッキング再調整はそのうちに。

2021-08-30 短波受信動作復活




第2中間周波パスバンドを測定する

    FM/SW/MWの各バンドが動作し始めたので、現役当時の問題 - 7MHzSSBがほとんど聞こえない - に取り組みます。

    今回実際にRF-2200をいじり始める以前に、 1996年以降他の受信機をいろいろいじっている中で、 RF-2200のこの問題はおそらく 第2中間周波数のパスバンドのセンターとBFOのセンターがずれている ためだろう、 という予想を立てていました。 パスバンドセンターに対してBFO周波数が低すぎて、 LSBの再生ピッチが正しくなるようにダイヤルを合わせるとLSBのサイドバンドがパスバンドから外れてしまい、 聞こえなくなってしまう・・・ 聞こえるのは逆サイドバンドばかり・・・ なのだろうと。 この推測が正しいのかどうかを確認するため、まずは第2中間周波数のパスバンドを測定してみます。

    アンテナをつながず、BFOは入れず、RF GAINコントロールをゲイン最低に。 ノイズレベルがひくい周波数を探してセットし、 シグナルジェネレータで生成した455kHz無変調の信号を第2周波数変換出力に注入します。 チューニングインジケータ電圧をDCモードにしたオシロスコープで観測し、 一番強く受信できる周波数のときにメータ指示が6程度になるようにシグナルジェネレータ出力を調整します。 ここが第2中間周波数のセンター。 センター周波数は456kHzでした。

    つぎにここからシグナルジェネレータの周波数を1kHzずつ動かします。 オシロスコープの表示を見て受信機チューニングインジケータの振れが同じになるようにシグナルジェネレータの出力を上げ、 出力レベルをメモしていきます。 またこの手順を、BAND WIDTHスイッチがWIDEのときとNARROWのときとで繰り返しました。 結果は右グラフ。




    RF-2200は選択度切り替え機能を持っているというのはICF-5900に対して大きなアドバンテージで、 実際私がICF-5900でなくてRF-2200を選んだ最大の理由はこの点がとても魅力的だったからでした。

    計測結果を見ると、 BAND WIDTHがWIDEのときはパスバンドセンターは10kHz幅のプラトーを示しています。 これなら近接混信がなくてWIDEにセットできるときは、 良好な音質で聴くことができますね。 近接混信があるときはBAND WIDTHをNARROWにセットすることによって、 10kHz離れた局ならかなりのところまでカットできることがわかります。 RF-2200の選択度切り替えスイッチ、いい仕事をしている!

    いっぽう、目的信号が一番よく聞こえるダイヤル位置 - パスバンドのセンターは、 WIDEとNARROW時とで3〜4kHzほどずれています。 現役当時、BAND WIDTHスイッチがWIDEのときとNARROWのときとでセンター周波数がずれているっぽいことには気がついていました。 今回はこれを計測してグラフ化し証明できた、ということになります。

    このWIDEとNARROWのセンターのズレゆえ、現役当時は、 クリスタルキャリブレータでサブダイヤルを較正して目的周波数で待ち受け受信するとき、 また現在受信している周波数をダイヤルから読み取るときは必ずNARROWポジションにしていました。 小学生が自力で編み出したそのコツが正しかったこともグラフからその正しさが説明できます。

2021-08-30 短波第2中間周波数パスバンド測定





BFO周波数を測定する

    「第2中間周波数パスバンドのセンター周波数とBFO周波数がずれている」ことを確認するため、 BFO周波数を測定してみましょう。

    本機のBFOはトランジスタ1石によるLC同調発振回路で、 プリント基板下部の、バリコンに一番近いところに配置されています。 発振出力はゲルマニウムダイオードを通して青色のビニール線で取り出され、 プリント基板中央からやや右よりの下方にあるプロダクト検波回路に導かれています。

    BFO出力にはバッファアンプは入っていません。 BFO周波数の安定度はまだ測定していませんが、 受信信号強度によって無視できない程度のチャープがあるならばここにバッファアンプを追加するのは効果がありそうに思えますし、 あるいはそれこそ周波数を可変できる発振回路を組み込むこともできそうです。




    BFO出力信号を観測するため、セラミックキャパシタC195の左側の足にx10設定にしたローブをつなぎ、 オシロスコープで波形を見てみます。 幸い、プローブをつないだことによるBFO周波数の変化はほとんどありません。



    BFO出力を周波数カウンタに直接入れるとさすがに発振周波数が影響を受けてしまうと思われたので、 X-YモードにしたオシロスコープのCh.2にシグナルジェネレータの出力を入れ、 リサージュ図形を描かせてゼロビートをとる方法をとりました。

    これでゼロビート時のシグナルジェネレータの周波数を読めばいいわけですが、 使ったシグナルジェネレータは全く動作しなかった故障廃棄品を修理した岩通SG-4111。 アナログ発振器部はきちんと動作するようになったのですが、内蔵デジタル周波数カウンタは動作しないまま。 なので、シグナルジェネレータ出力は別の周波数カウンタで測定します。 機材は故障修理品ばっかりなので、こんなヘンテコなセットアップになります。 夢と時空の部屋、たのしいね。

    なおこのとき菊水MSG-2161を使えばこんなことしなくても済んだのに、 と後になって気がつきました。 でもまあ、MSG-21261だと10Hz台は読めないから、 などと自分のボケの言い訳をしておきます。




    さーて測定開始、と思ったら、 昨日まできちんと動作していた 岩通SC-7202周波数カウンタ が起動しません。 ありゃありゃ、またまた修理アイテムが増えた。

    なので代わりに、LODESTARのシグナルジェネレータ内蔵の周波数カウンタで読みます。 む、これなら最初からLODESTARで比較用周波数を発生すればよかったんじゃん。

    とにかく、RF-2200のBFO発振周波数は453.9kHzでした。 パスバンド中心の455.9kHzに対して2kHzも低くなっています。 これではLSBを受信しようとすると目的のSSB音声信号は453kHzあたりにいるわけですから、 第2中間周波数帯域から外れかかっていて、かなり減衰されてしまうでしょう。 やはりこれが47年前の私の失望の原因です。

    この周波数、計測している間に±0.2kHzほど動きます。 どうやらやはり、RF-2200のBFOはCW/SSBを安定して受信するほどの安定度は持っていないようです。 しょせんは子供向け受信機、だったんだなあ。





BFO周波数を調整する

    RF-2200のBFO発振コイルの黒色コアを回し、 発振周波数を456kHzに調整しました。

    さっそく7MHzのSSBを・・・と思いましたがアンテナは室内に這わせたビニール線だし、 すでに夜も更け、強力なSSB局は見つかりません。 それでもかろうじて聞こえていた1局は、 チューニングすると逆サイドバンド時とほとんど同じメータの振れ方ではっきりと聞くことができました。 3kHz離れて同じような信号強度の局がいるときはそちらの逆サイドバンドがまともにかぶさってくるのでしても良好な受信とはいかないでしょうけれど、 それでもこれでRF-2200の本来のSSB受信能力が得られたはずです。 ちゃんとしたアンテナを使っての受信が楽しみだなあ。

2021-08-31 BFO発振周波数をセラミックフィルタパスバンドセンター周波数に合わせ込み調整





先に周波数カウンタを

    ラボにある周波数カウンタは、1998年に Lafayette HA-63A を修理していた時に新品で買ったLODESTAR SG-4102AD。 しかしこれはアナログシグナルジェネレータに内蔵されているカウンタで、 読取り精度はあまり高くありません。 故障品として手に入れた岩通SC-7202が安心して使えたら良いのですが。

    なので、とりあえず調子よく鳴り出したRF-2200でジャズアレンジを聴きながら、 先にSC-7202の修理を試みることにします。 作業内容はこちら。




BFOスイッチとマーカースイッチ

    4日 間を開けたら、またAM受信時に無音になる症状が出ました。 でもBFOスイッチでもバンドセレクタでもなさそう。 やはり検波段以降のどこかに、たとえば壊れかけの電解キャパシタでもあるのかな。

    オシロのフックアップポイントを探していて、 うん、まずはAM検波段からオーディオ信号を取り出すC61のバンドセレクタ側を見てみようか。 場所の関係で楽にはプローブをフックできず、 じゃあ短いリード線でもはんだ付けするか。 でもそれならついでに・・・ C61 0.1uF 50V 電解キャパシタを新品に交換しました。 リード線を長めに残し、 プローブをフックしやすいようにして。

    で、いじっているうちに、ああ、やはりBFOスイッチの接触不良だったらしい。 それに、マーカースイッチも。 接点復活剤スプレーで症状は消えました。

    アンテナは室外に垂らしただけのビニール線、 だけれども7MHzのSSBは調子よく復調できます。 こんなにはっきり7MHz SSBが聞けた記憶はないなあ。 BFO周波数の調整、大成功! 小学生の時以来の課題、達成!

2021-09-05 BFOスイッチ & マーカースイッチ接触不良対策 AM検波カップリングキャパシタC91新品交換






短波第2局発周波数を調整する

    岩通SC-7202ユニバーサルカウンタ不調 の調べがつき、 いったん動作し始めれば安定に動作することがわかったので、 復調を祝いながらこれを使いながらテストと調整を行いましょう。

    カウンタをx10パッシブプローブでuPC1018の1ピンにつなぐと、 第2局発の周波数は約35kHz変動してしまいます。 RFアクティブプローブが欲しいところですがおいそれと手が出る価格ではありませんね。 ゲイン精度は必要ではないし扱う周波数もそんなには高くないのでシンプルなヘッドアンプをひとつつくる作戦もありえますが、 抵抗を1本介してフックしたらどうか、試してみました。

    47kΩを介してプローブをつなぐと、周波数変動はほぼないもののSC-7202は計測してくれません。 22kΩだと、SC-7202は周波数を表示してくれて、そのときの周波数変動は270Hzでした。 270Hzならばまあ調整誤差として許容できるでしょう。





    このセットアップでは、第2局発の周波数は2.4289MHzでした。 設計値2.4400MHzに対して11kHzのズレです。 第2局発の発振コイルL4を回して、 発振周波数を2.4400MHzに合わせました。

    第1中間周波数トランスの再調整はしていませんので感度がわずか下がった可能性はありますが、 使ってみた感じ変化には気づくことができません。

2021-09-07 短波第2局部発振周波数を2.4400MHzに調整





    短波第1中間周波数を、間接的な方法で測定してみます。 SW2バンドにセットし、BFOをONにし、シグナルジェネレータで10.000MHz無変調の信号を出してそれを受信してゼロビートを取ります。 つぎにダイヤル位置はそのまま、バンドセレクタをSW1バンドに切り替え、 シグナルジェネレータの周波数を動かしてゼロビートをとり、受信周波数を調べます。 試してみると、受信周波数は6.033MHzでした。 10.000MHzに対して3.967MHz低くなりました。 第1中間周波数はこの差の周波数の半分なので、3.967 / 2 = 1.9835MHzということになります。

    すでに第2局発は2.440MHzに調整済みで、第2中間周波数センター実機測定値は0.456MHzでした。 その結果からすると第1中間周波数は 2.440 - 0.456 = 1.984MHzになっているはずでした。 この数字は、今回測定した1.9835MHzと誤差の範囲で一致しています。 RF-2200の第1中間周波数の設計値は1.985MHzですから、 この実機はほぼ設計値通りに調整できていると言っていいでしょう。

    第1中間周波数が狙い通りになったので、 短波第1周波数変換トランジスタTR11/TR12の出力と短波第2周波数変換のIC1 1ピンの間に入っている短波第1中間周波数トランスL13とL14を再調整すれば、 感度と選択度それにイメージ抑圧性能の向上が期待できます。 が、現状でも感度は十分すぎるほど得られているし、 第1中間周波数が大きく狂っていたというほどのことでもありませんから、 この調整は行わず、あとあとのお楽しみとしておきます。

2021-09-10 短波第1中間周波数を測定






イメージ混信を考える

    RF-2200は短波は6バンドに分割されていますが、 第1局部発振周波数はSW1とSW2が共通、SW3とSW4が共通、SW5とSW6が共通です。 つまり第1局部発振コイルは3組しかありません。

    実はRF-2200は短波の奇数バンドはハイサイド・インジェクション、 偶数バンドはローサイド・インジェクションにしているのです。 この方式で第1局発の部品点数とコイル切り替え回路の規模を半部に減らして、ローコスト化を図っています。

・・・ああ、それでか!

    RF-2200のメインダイヤルを見ると、 各バンド4MHz幅で周波数の間隔が一定の周波数直線ダイヤル - RF-2200の最大の技術的特徴 - なのですが、 ダイヤルの数字の並びはバンドごとにわずかに千鳥の配置になっています。 SW1とSW2のダイヤルは同じ位置でほぼ4MHz離れているわけですが、 実は第1中間周波数設計値は1.985MHzなので、 同一ダイヤル位置でSW1とSW2は正確には 1.985 x 2 = 3.970 MHz違うのです。 4MHzにあと30kHz足りません。 なのでこの30kHzぶん、隣り合ったバンドのダイヤルの文字がずれることになるのです。 小学生の時「なぜ文字が規則正しくずれているのだろう?」 と思ったのですが、 45年経ってその理由がわかりました。 いまからタイムマシンに乗って小学5年の自分に説明してやったらどうだろう。 「ふうん、よくわからないや」とか言うのかな。

    SW2できわめて強力な信号を受信しているときにSW1に切り替えると、 SW2での信号がそのまま聞こえる時があります (逆の場合もあり)。 RF-2200のバリコンによるRF同調はアンテナ直後の1段のみで、 高周波増幅出力は非同調でただちに第1周波数変換に入ります。 1段同調だけでは3.967MHz離れた強力な信号を分離しきれず、フィードスルーしてしまうわけですね。 もっと平たく言えば、これは第1周波数変換に起因したイメージ混信なわけです。

    ダブルスーパーヘテロダイン方式は、 第1中間周波数を高く取ってイメージ混信を低減し、 第2中間周波数を低く取って選択度を高めることが目的なわけですが、 RF-2200の第1中間周波数1.985MHzという設計はイメージ混信低減の目的にはいささか不足といえます。 し、なにしろ高周波増幅段出力/第1周波数変換入力のバリコン同調を省いて非同調にしているというのは、 コストダウンの重要性は痛いほどわかるものの、 かなりの失望ポイントです。 こうなると、ライバル製品との競合上ダブルスーパーヘテロダインという言葉をカタログに入れなければならなかったためのダブルスーパーだ、 と言えてしまいそうです。 でも、そのコストダウンの設計判断のおかげで小学生が牛乳配達で買えたんだものなあ。

    RF-2200の第1周波数変換起因のイメージ抑圧性能を簡単に試してみました。 短波7.500MHzを受信してみると、 シグナルジェネレータ出力20dBuでかろうじて聞き取れます (実際の感度はもっともっと良いのですが、 プラスチックボディで室内のノイズをガンガン拾ってしまうので20dBuでようやくノイズから信号が顔をのぞかせる感じ)。 このダイヤル位置のまま7.500MHz + 3.968MHz = 11.445MHz の信号を入れてみると、 46dBuで入れたときにかろうじて聞き取れます。 つまり+3.968MHzのイメージ信号の抑圧は26dBuだ、ということになります。 あるいは、イメージ抑圧はわずか26dBuでしかない、と言えます。

    ライバル機 SONY ICF-5900 は第1中間周波数を10.7MHzに取っています。 5900には高周波増幅段がなく、バリコン同調のあとただちに第1周波数変換に入ります。 RF同調が1段しかないという点ではRF-2200と同じなのですが、 第1周波数変換起因のイメージ抑圧は60dBuを確保しています。 同じダブルスーパーといっても、イメージ抑圧の点ではICF-5900の圧勝、RF-2200は完敗。

    いっぽうICF-5900は第1中間周波数が±250kHzの広帯域増幅になってしまっているので、 その帯域内に強力な局がいると第1中間増幅段がオーバーロードし受信不能に陥るという、 回避が困難な致命的な欠陥を持っています。 この点、RF-2200なら100dBuの強力な信号でも40kHz離れていれば涼しい顔。

    ということは・・・RF-2200にプリセレクタを組み合わせて±4MHzのイメージ信号をあらかじめカットしてやれば、 ICF-5900に圧勝できるはず・・・ そうだ、プリセレクタを試そう!

2021-09-10 イメージ混信を考える


    なお・・・7.500MHz受信中に+0.123MHzに85dBu以上を入れると聞こえてくるという現象あり。 これはどういう理屈で起きている?





周波数ドリフトを測る

    電源ONからの周波数ドリフトの具合を測ってみました。 なぜか幣ラボのほかのページでは15.000MHzで測っているので、今回も。 シグナルジェネレータを15.000MHzにセット。 一晩電源OFF状態だったRF-2200の電源を入れ、BFOをONにし、ゼロビートを取り、 以降は受信機には触れずにシグナルジェネレータ側の周波数を動かしてゼロビートを追っていきます。 今回は11時間もの間測定を続けました。

    電源投入直後からの安定した変化傾向は1時間45分あたりで最大変化5kHzを記録し、 その後変化の向きが変わっておおむね3時間でもとの周波数に戻ってきました。 機内素子の温度が安定するには3時間かかる、といった感じです。

    3時間経過後は下がったり上がったり、でも±2kHzの範囲に収まっています。 この変動はたぶん室温のわずかな変化が影響している様子。

    3時間ほどウォームアップしておいてもSSB/CWはやはりちょくちょくダイヤルに手を伸ばす必要はありそうです。 が、短波のAMラジオを聞く分にはほとんど手放し放置で連続聴取できそうですね。 ポータブルトランジスタラジオとしては優秀といえると思います。

2021-09-13 周波数ドリフト計測






一段落

    現役時代の機能・性能がほぼ復元できましたので、 内外装を清掃して組み上げ、一段落とします。 土曜の午前中、15MHzのラジオ・タイランドを聞くRF-2200。 やはりこのラジオは絵になりますねえ。

    今後の課題は・・・

  • メインダイヤルの一様な周波数ズレ
  • オーディオアンプはもう少し高域が伸びても良さそう?
  • ダイヤルメカニズムのごくわずかなガタ - たぶん修理不能?
  • 短波各バンドのトラッキング
  • SW3/SW4でクリスタルキャリブレータの信号が弱いような気がする
  • 短波第2中間周波トランス再調整でWIDEとNARROWのセンター周波数ずれを是正できないか?

  •     ま、これらは気が向いたら。






    > 途中で行った修理・・・岩崎通信機 SC-7202 ユニバーサルカウンタ

    > 次の修理・・・ミズホ通信 SX-1 プリセレクタ


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