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Radio Restoration Projects

Hallicrafters SX-96
General Coverage Shortwave Communications Receiver

Hallicrafters SX-96 is a 12-tube, double superheterodyne general coverage shortwave receiver.
The unit here suffered distorted audio and the modification done by previous owner was suspected.
SX-96 has neat looking and rugged construction, and perhaps the best Hallicrafters for my purpose of shortwave listening.

Hallicrafters SX-96 Front View


SX-96

    ハリクラフターズSX-96はアマチュアバンド受信に重点が置かれたゼネラルカバレージ受信機です。 1955年発売、定価249ドル50セントで、翌1956年まで販売されました。 世代的にはハリクラフターズ製受信機で最も評価されているSX-88の後継機にあたります。

    同じ年に発売されたSX-99は96に比べ簡素化された作り (8球シングルスーパーヘテロダイン) ですが、 こちらは1959年まで販売され、現在でも数多く見受けられます。 SX-96はすぐに後継機SX-100に取って代わられ、さらに1957年にはこれまた評価の高いアマチュアバンド専用機SX-101が登場します。 SX-96の面影は1964年発売のSX-122まで引き継がれますが、 それがハリクラフターズ最後の本格的ゼネラルカバレージ受信機となりました。

Related Link: Rovero's SX-122 page (Remote)
    Beautiful picture of SX-122, as well as other interesting boatanchors. Thank you Josh!
    SX-122の写真や内部構造などが見られます。


    SX-96 は12球ダブルスーパーヘテロダイン構成で550kHzから30MHzまでをカバーし、 各アマチュア無線バンド用に較正されたバンドスプレッド・ダイヤルを持っています。 たとえば40メーターバンド(7MHz帯)を使うときは、バンド切り替えスイッチを4.6-13MHzにセットし、 ついでメイン・ダイヤルを7.4MHzの位置につけられた印にあわせます。 これにより、バンドスプレッド・ダイヤルで正確な周波数を読むことができます。 メイン・ダイヤルには冷戦の時代のラジオの特徴、CDマークも見られます。

    バンドスプレッド・ダイヤルはアマチュアバンド用に較正されています。
    ギヤドライブのメイン・チューニングと、 極細ワイヤを使ったバンドスプレッドのメカニズムにはそれぞれフライホイールが組み込まれており、 減速比も大きく、かつダイヤル操作はたいへんスムースです。

    SX-96は新機能の USB/LSB切り替えポジション が最大の特徴で、 選択度切り替えつまみ、 BFOピッチコントロール、大型Sメータなど充実した内容の高級受信機です。 当時のアマチュア局は受信機と送信機を並べるのが普通で、 よってこの受信機にも送信機との接続(フロントパネルのスイッチで送信機をONできる、 あるいは送信機から受信機を停止できる)の工夫がされています。





リビングの飾りの2年間の後に

    私のSX-96はリバモアのスワップ・ミートで前のオーナーから直接買いました。 SX-96にはマイナーチェンジが入っています。私のモデルはMARK1A。 欠品はなく、外観は年代相当の疲れが見えるものの保存自体は良好で、 オリジナルのマニュアルとオーナーの動作保証付き。 オーナーはまた施した改造の内容についても説明してくれ、内容を記録したメモをつけてくれました。 真空管全盛の時代の高性能受信機が欲しかったもののコリンズはあまりに高価、 ハマーランドはいかにも大きくて手におえなさそうに思っていましたので、端正なマスクで程度の良いSX-96は私にとってベストバイです。

    ラボで動作させてみると全ての機能が正常に動作し、当然のことながら S-38C などの入門者用ラジオでは全く聞こえない信号が見事に受信できます。 安定度も十分。

    しかしその後、どうやらこのSX-96は完調ではないように思えてきました。 感度・選択度・安定性は大変良いものの、どうにも音質がいまひとつなのです。 SSB受信ではさほど気にならないのですが、AM受信の音質がかなり悪いことがわかりました。
    ラボで使用するとすぐそばのコンピュータのノイズも強烈に入ってしまい、どうにも国際放送をゆっくり聴く雰囲気になれません。 やがてSX-96はリビング・ルームのスチール・ラックに移され、 いずれは手を入れてやろうと考えつつも単に部屋の飾りとしての存在になってしまっていました。 以来ラジオはローカル・国際放送のいずれも、ほとんど エコーフォンEC-1A を使うようになってしまいました。

    2年間が経ち、 SBE SB-34トランシーバ の受信部分の修理が一段落しベンチを片づけたのを機に、 ようやく思い立ってSX-96の音質改善プロジェクトを開始することにしました。 しばらくぶりに電源を入れ、状態を再確認。 AM受信時の音質がひどく、これは強烈なローカル放送だけではなくて通常の国際放送でも発生します。 音質を除いた他の性能に問題はなさそうです。 まずはケースを開け、マニュアルを読み返し、また前オーナーの改造内容を確認することから始めました。



回路構成

    SX-96は受信周波数範囲全域でダブルスーパーヘテロダイン動作します。 第1中間周波数は中波放送バンドのすぐ上の1650kHz、そして第2中間周波数は50.5kHz。 このため550kHzから30MHzまでをカバーするとはいえ、 第1中間周波数に近い1580kHzから1720kHzの間がバンド・ギャップとなっており受信できません。 短波帯は3バンドに分割されています。

    アンテナからの信号はまず6CB6 シャープカットオフ5極管 (V1) で高周波増幅され、 第1周波数変換管 6AU6 (シャープカットオフ5極管) (V2) に入ります。 ここで信号は第1中間周波数1650kHzに変換されます。 第1局部発振は出力用3極管 6C4 (V3) で行われており、 発振回路のB電圧は放電安定管 VR150/0D3 (V10) で150Vに安定化されています。

    第1中間周波増幅を行うのは 6BA6 リモートカットオフ5極管 (V4)。 このステージは高周波増幅段とともにAVC電圧によってゲイン制御されており、 この管のプレート電流がフロントパネルのSメータによって計測されます。 入力信号がないとき 6BA6 はフルゲインとなり、したがってプレート電流が最大となります。 Sメータが無信号時で左、信号強度が大きくなるにつれて右に振れるようにするため、 針の振れかたが通常のものとは反対のメータが使用されています。 この6BA6はSメータアンプを兼用しているともいえるでしょう。

SX-96 S Meter

    増幅された1650kHzの信号は中間周波トランスを通った後、6BA6 (V5) で構成される第2周波数変換段に入ります。 第2局部発振は12AT7 双3極管 (V12) で構成された2つの水晶発振回路によって行われます。 双3極管の第1セクションがUSBおよびAM受信用の1700kHz発振回路、第2セクションがLSB受信用の1600kHz発振回路です。 このうち選択されているほうの3極管のカソードがチョークコイルを介してグラウンドに落とされ、回路は発振を開始します。 選択されていないほうの管はカットオフ状態となり、動作を停止します。 ヘテロダイン処理によって得られた50kHzの信号は50.5kHzを中心周波数とする第2中間周波数トランスを通り、 ここで不要側波帯が減衰されます。 この第2周波数変換ブロックはサブシャーシ上に組み立てられています。

    第2中間周波増幅は6BA6 (リモートカットオフ5極管)(V6) で行われます。 増幅された50kHzの第2中間周波信号は、中間周波トランスを通った後、6BJ7 (V7) の2極管第1セクションのプレートに印加されます。 ここが検波段で、シンプルな半波検波です。
Selectivity Control

    検波管6BJ7はトリプル2極管で、第1セクションが検波、第2セクションがノイズ・リミッタそして第3セクションがAVCとして動作します。 検波段のカソードから取り出された音声信号は、2極管第2セクションを通過します。 ここがノイズ・リミッタで、通常は順方向にバイアスされて導通状態にあり、検波出力の音声信号が通過できます。 しかしイグニション・ノイズのようなパルス信号が与えられると2極管は逆バイアスとなって、 音声信号を遮断するようになっています。 SX-96のフロントパネルにはノイズ・リミッタのON-OFFスイッチがありますが、 これをOFFにするとノイズ・リミッタ2極管のカソードとプレートがショートされて、音声信号は常時通過できるようになります。

    AVCは第2中間周波段の出力を検波して、 その直流分を高周波増幅段と第1中間周波増幅段のコントロール・グリッドにフィードバックしています。 フロント・パネルのAVCスイッチをOFFにすると、AVCラインは抵抗を介してグラウンドに落とされ、 高周波増幅段と中間周波増幅段は常時フルゲインとなります。

    SX-96のオーディオ段は、とくに変わったことのない素直な回路構成です。 音声信号はカップリング・キャパシタとボリューム・コントロールを通った後、 双3極管 6SC7 (V8) の第1セクションのグリッドに印加されます。 ここで増幅された音声信号はカップリング・キャパシタを通って出力用5極管6K6-GT (V9) のコントロール・グリッドに印加されます。 音声出力信号は出力トランスの2次側から取り出されます。 本機にスピーカは内蔵されておらず、背面パネルの3.2Ωもしくは500Ω用のスピーカ端子にスピーカを接続します。 今のスピーカでは500Ωのタップを使用することはまずないでしょう。 また本機フロントパネルには現代風の、差し込むだけでスピーカの音が切れるヘッドホンジャックがあります。

    BFOは双3極管 6CS7 (V8)の第2セクションからなるハートレー発振回路で、 発振出力はカップリングキャパシタC93(300pF)を介して検波段2極管のカソードに印加されます。 BFO発振周波数はフロントパネルのPITCHコントロールで微調整を行うことができるようになっています。 PITCHコントロールを回すと発振回路のコイルに差し込まれたスラグの位置が動くようになっています。 AM/SSBの切り替えはフロントパネルのトグルスイッチによって行います。 SSBにするとBFO管のプレートにB電圧がかかってBFOが動作し、AMにするとBFOが停止します。

    電源回路には全波整流管 5Y3-GT (V11) が使われ、B電圧として音声出力管に300V、その他の回路に270Vを給電します。 安定性が要求されるステージへのB電圧供給は放電安定管 VR150/0D3 (V10) を介して行われています。 整流管を除く全ての真空管のヒータとパイロットランプへの電力は6.3VのA電源巻線から供給されます。 背面パネルにはDC動作のためのコネクタが用意されていますが、インバータが内蔵されているわけではなく、 外部から300VDCのB電源と6.3Vのヒータ電源を供給しなくてはなりません。 通常のAC動作時には、このコネクタにジャンパー・プラグを差し込んでおきます。

    シャーシ上面を見て面白いのは、使われている真空管の種類。 放電安定管0D3がST管、低周波増幅とBFOの6SC7がメタル管、整流管5Y3-GTとオーディオ出力の6K6-GTがGT管、 そしてその他がMT管といった具合で、よりどりみどりの感があります。




前オーナーの改造

    前のオーナーの作業メモに記録されていた変更内容は、通常のメインテナンスに加えて、検波段をSX-101相当にするものでした。

第1局部発振回路調整用トリマキャパシタ変更

    第1局部発振回路の調整用トリマのC52を25-125pFに、パラに入っているC51を100pFマイカに変更。 オリジナルのC52が壊れてしまったため。 これは音質劣化に影響するとは思えません。 すでに40年を経過した受信機ですので各部のキャパシタの劣化は当然です。 前オーナーはすでにいくつかを交換しています。


ノイズ・リミッタ改造

    変更点数は少ないながら、ノイズ・リミッタ周りの回路を大きく変更しています。 メモにはSX101に近づけるためとありますが、大きな疑問符つきの改造です。 前オーナーはSSBあるいはCW受信が専門でAM音質に関しては気にしなかった、という可能性もあります。

BFO出力取り出し方法変更

    BFOは双3極管 6SC7 (V8) の第2セクションで発振され、 カップリングキャパシタC93 (300pF)を介してトリプル2極管6BJ7 (V7) の第2セクションで構成される検波段のグリッドに印加されます。 ノーマルではBFO出力は 6SC7のグリッド(3番ピン)から取り出されていますが、 これをプレート(2番ピン)から取り出すように変更されています。 前オーナーのメモにはSX-101MkUと同等にするためと書かれており、またこれによってより安定した動作になる、とあります。
    この改造の妥当性は検証する必要がありそうですが、音声の歪はもっぱらAM受信時に顕著なので、 ひとまずは忘れて良いと思われます。

    以上の回路変更のほか、ケース上部のボンネット内側に小型スピーカが取り付けられていたり、 電源ケーブルが現代風の3ピンのものに取り替えられています。 前オーナーはまた真空管をテスタでチェックして、エミ減となっていたものを交換しています。

低周波増幅・出力段のチェック

    半田ごてとポンコツオシロに火を入れ、いよいよ内部をいじりだすことにします。

    おそらくここは大丈夫だろうと思いながらも、まずは低周波増幅・出力段のチェック。 電源、スピーカ(オーディオ用のコンパクトブックシェルフタイプ)をつなぎ、 CDプレーヤの音声信号を背面パネルのPHONOジャック(RCAジャック)に接続。 そう、この通信機型受信機にはなんとレコードプレーヤをつなぐための用意があるのです。 この時代の高級モデルではさほど珍しくはないようなのですが、それにしても意外。
    テストで使うCDは Bob Culbertson の <Cafe San Francisco>。 チャプマン・スティックとよばれる12弦のギターのような楽器をたった一人で演奏しているものです。 パロアルトのアート・フェスティバルの日に、 ユニバーシティ・アベニューの路上で演奏しているCulbertson氏のスティックから響くなんともきらびやかでかつ深いその音に感激してCDを買いました。 本人のサイン入りです。 真空管の細いグリッド線に与える音としてまさにふさわしいものです。 スピーカからは短波受信機であることを忘れてしまいそうな美しいスティックの響きが聞こえます。
    前オーナーの出力アンプのグリッドバイパスキャパシタ容量変更は問題を起こしていないといえるでしょう。

検波段入力信号のチェック

    第2中間周波増幅管6BA6 (リモートカットオフ5極管) (V6) で増幅された50kHzの第2中間周波信号は、中間周波トランスを通った後、 検波管6BJ7 (V7) の2極管第1セクションのプレートに印加されます。 そこで、6BJ7 を取り外してプレート端子の波形を見てみることにしました。
    ローカルAM放送を受信してAM信号波形を見たところ、 SENSITIVITYコントロールを7以上に上げると波形ピークがクリップされてしまいます。 これはAGC(このころはAVCと呼ばれていました。以降AVCと書きます。)が 6BJ7 の第3セクションを使っており、 それを抜いてしまっているために入力信号が強いにもかかわらず前段がフルゲインで動作してしまっているためです。 SENSITIVITYコントロールを下げれば、教科書どおりのAM波形となります。 ここまでの段階で大きな歪があるようには思われません。 そうすると、検波段で歪が発生していることになります。

代替検波段でのテスト

    検波段に問題があることを立証するため、代わりの検波段を設けてテストしてみました。 パーツボックスから検波用ゲルマニウム・ダイオード、セラミック・キャパシタそれに抵抗1本を取り出し、 ほとんどゲルマラジオのような即席検波回路を組み込みました。 音声出力はそのままボリューム・コントロールのホット側に注入してみます。
    すると案の定、受信音に歪はありません。 WWVの受信波形も正常な正弦波ですし、短波・中波のどの局もきれいに聞こえます。 すでに記したように、高周波・中間周波段での飽和を防ぐため適宜SENSITIVITYコントロールを操作する必要がありますが。
SX-96 Internal

AVCとノイズリミッタ

    AVCは第2中間周波段の出力を検波して、その直流分を高周波増幅段と第1中間周波増幅段にフィードバックしています。 ぱっと見る限りここで歪を発生させる可能性は少ないように思われますし、AVC動作自体は正常に行われているようです。 SX-96のSメータは第1中間周波増幅j管 6BA6 (V4)のプレート電流を計るようになっており、 そしてSメータの動きは正常に思えます。 これは6BA6のコントロール・グリッドに印加されたAVC電圧の振る舞いが正常であることの証でしょう。

    これに対して、音声信号の導通・遮断を制御するノイズ・リミッタはかなり怪しく思われます。 もっとも、問題となっている歪はノイズ・リミッタ・スイッチのON-OFFによらず発生していました。 もしノイズ・リミッタに問題があるとすれば、 前オーナーがおこなったSX-101化改造によって検波段に問題を引き起こしてしまった場合でしょう。

    取り外した 6BJ7 はハリクラフターズ社のロゴ入りですので、おそらくオリジナル球でしょう。 念のためヒータを乾電池で点火してみたところ各セクションの計3本とも正常に点火します。

AVCの動作チェック

    AVC回路は正常であることを確認するため、6BJ7を元に戻しました。 ただし検波回路のプレートは切り離し、検波はゲルマニウム・ダイオードによる代替回路のままです。
    動作させてみると、音は良好なままです。 今度はSメータが電波の強さに応じて動き、 強力な信号を受信中にSENSITIVITYコントロールをフルにしても受信音は歪みません。 よってAVCは正常に動作しているようです。
    ただしここで奇妙なことに気が付きました。 AVCスイッチをOFFにしてもAVCが動作し続けるのです。 AVCスイッチをOFFにするとAVC出力ラインが100Ωの抵抗でグラウンドに落とされ、 高周波増幅・第1中間周波増幅ともフルゲインで動作するようになります。 このとき第1中間周波増幅管のプレート電流は最大となり、 したがってSメータは信号強度によらずS1を示すはずなのですが、 Sメータは依然として信号強度に応じて振れます。 手を加え始めるまではたしか正常にAVCが切れていました。 代替検波段がなにか影響しているのでしょうか?

BFOの動作チェック

    ここまでの作業で私の最大の用途である「国際放送をリラックスして聴く」ことができるようになったわけです。 ここで投げ出してゲルマニウム・ダイオードを残したままケースを閉じてしまってもいいわけですが、 それではSSB受信ができないままで、 せっかくのUSB/LSB切り替えやアマチュアバンド較正目盛り付きバンドスプレッドの意味がありません。 BFOを動作させ、発振出力をオシロで見てみました。 わずかな歪が見られるもののほぼ正弦波で、発振は安定しています。

SX-101化改造の復旧

    ますますSX-101化改造に問題がありそうに思われてきました。 そこでこの部分の改造をノーマルに戻してみました。 変更は3個所、検波用2極管とノイズ・リミッタ用2極管のそれぞれのカソードをつなぐあたりで、 抵抗撤去が1つ、キャパシタの撤去・ショートが1個所、そして抵抗値変更が1つ。 代替検波回路を取り外し、変更を終え、期待しつつ電源投入。 すると・・・残念、音はやはり歪んでいます。 シグナル・トレーサがわりの安物PC用アンプ内蔵スピーカ (ハルテッド・エレクトロニクスのアニュアル・セールで1ポンド45セントの目方売りで買ったものです。ざっと1kg100円です) をつないだところ、歪はさらに悪化してしまいました。 このアンプの入力インピーダンスがあまり高くないとはいえ、悪化具合はかなり大きいものです。 ひょっとしたら検波は正常なのに、その出力をノイズ・リミッタの周辺回路が変に吸収してしまっているのかも知れません。

ノイズ・リミッタの切り離し

    そこで、思い切って検波段からBFOおよびノイズ・リミッタ回路をすべて切り離してみました。 これで代替検波回路との違いはゲルマニウム・ダイオードを使うか、2極真空管を使うかだけになります。 結果は・・・歪なし。 あれあれ、ひょっとしたらSX-101化改造そのものはうまくいっていて、原因は他のところにあるのかも。 それでは、BFOだけを元に戻してみたら・・・? OK。 音声は正常で、AMもSSBもうまく復調できます。 BFOは前オーナーの改造回路のままなので、したがってこの改造をオリジナルに戻す必要はなさそうです。

    いずれにせよこの時点で、 問題はノイズ・リミッタとコモンになる検波段のカソードまわりにあることがはっきりしてきました。 となるとまず疑われるのは都合4個使用されているキャパシタの劣化。 4個のうち1個は前オーナーの改造時に撤去された0.22μFで、 これはパーツ箱のなかから取り出した新古品を取り付け直したのでたぶん問題無し。 あとの3個に疑問が残っています。

    あるいは、前オーナーのチェックでは正常と判断されていたものの、 ノイズ・リミッタ用の 6BJ7の第2セクションでカソード・ヒータ間リークが起きている可能性もあります。 が、もしそうなら音声出力に顕著なハムが混入してもよさそうですが、ハムはほとんど出ていません。 したがって球自体は正常であると判断できます。 念のため手持ちの新品球を使ってもみましたが、結果に変わりはありませんでした。


検波管のカソード回路

    ノイズ・リミッタを切り離せば正常、といっても、よく聴くと少ないながらも音は歪んでいます。 オシロで音声信号を見てみると波形の下側がクリッピングされてしまっており、上下で波形の差が見られます。 単純な2極管検波ですから多少の非直線性は覚悟のうえとはいえ、正常とは思えないレベルです。 受信状態の良くないDX局を受信するならまだしも、 BBCのワールドサービスをくつろいで聴くには不向きです。 何とかもう少し良くならないものか・・・。

    2晩を費やしてあれこれ試行錯誤した結果、 検波管のカソードに入っている抵抗を小さくすることによって歪がかなり低減できることがわかりました。 オリジナルでは120kΩと330kΩが直列に入っていて、グラウンド側の330kΩとパラに220pFのキャパシタが入っています。 これを33kΩと100kΩに変え、キャパシタとして2000pFのマイカを使うことでほぼ満足できる結果が得られました。 キャパシタに1000pFを使うと高音がかなりきつくなり、また50kHzの第2中間周波数成分がわずかに残留します。 またこの定数のままノイズ・リミッタ回路を元に戻しても音質は変化しないことが確認できましたので、 オリジナルの抵抗とキャパシタを完全に取り除いて配線し直しました。 オリジナルの抵抗は1/2W、ところが手持ちの抵抗はほとんどすべてが1/8W。 幸い検波管のカソード電流は微弱ですから、手持ち品で問題ないでしょう。 今後のために1/2Wの抵抗をそろえておこうと思います。




ノイズ・リミッタの謎

    検波管のカソード抵抗を変えたことによって、 ノイズ・リミッタの動作点が狂ってしまうかもしれませんが、 そもそもこの回路にあまり期待はできないでしょう。 当時ノイズといえば自動車のイグニション・ノイズ程度だったのでしょうが、 いまでは最大のノイズ源はすぐ近くのコンピュータ。 どのみちこの程度の回路では除去できませんし、 ノイズ・リミッタ・スイッチをOFFにすれば検波管の信号はノイズ・リミッタをスルーしますから音の劣化も起こり得ません。

    さて、低周波増幅段の入力結線も元に戻し、これで完成!と思いきや、なんと音がひどい! ものすごく歪んでいるだけではなくて、レベルもとても小さくなっています。 あわてて検波段にオシロをあてると、そこでは正常。しかし低周波増幅段の入力信号は明らかに異常。 しかもノイズ・リミッタ・スイッチをONにしてもOFFにしても音はひどいままです。 いったいどうしてこんなことが起こり得るのか・・・。 回路図をながめ、配線を追いかけてたどり着いた結論を確認するためテスタを当ててみれば−ノイズ・リミッタ・スイッチの不良。 頑丈そうなトグル・スイッチですが、導通がありません。やれやれ。 やはりカソード抵抗の変更がもとでノイズ・リミッタに十分なバイアスがかからずに効きっぱなしになっており、 しかもそれをバイパスすることができなかったわけです。

作業完了

    結局スイッチの位置によらず常時ノイズ・リミッタをバイパスするようにし、 今回の作業を終了することにしました。 パーフェクトな修理とは行きませんでしたが、私の用途には十分です。 オリジナルと同じトグル・スイッチがもし手に入ったら、 今度はノイズ・リミッタの対策でまた楽しめるでしょう。 SX-96は再びスチール・ラックに戻されました。今度はいつでも使用できる状態で。


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Jan. 04, 1998 Created.
Jun. 28, 1999 Corrected "Grid of a diode"... What?!
Feb. 05, 1999 Added link to Rovero's SX-122 Page. Thank you Josh!
Dec. 11, 1998 Rervised.
Aug. 10, 2002 Reformatted using Netscape 6.2.
Aug. 13, 2002 Reformatted with Mozilla 1.0 as well as manually. Improved compatibility between browsers.
May. 16, 2004 Reformatted.
Dec. 14, 2005 Reformatted. Added some images. Updated a link to Rovero's SX-122 Page.
Jan. 07, 2011 Updated a link to Revero's SX-122 page.