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Echophone Commercial
EC-1B

General Coverage
Shortwave Communications Receiver
(1946)





Echophone EC-1B Front View

Echophone EC-1B

    Echophone Commercial EC-1B は 1946年製の低価格入門者向け短波受信機。 EC-1A のマイナーチェンジモデルです。 外観からはその差をすぐに言い当てることはできないでしょう。 ダイヤル盤に小さくEC-1Bと示されています。

    EC-1Bのデビューは・・・とQST誌をめくってみたのですが、 どこにも言及がありません。

    戦前に設計発売され、 第2次世界大戦中に生産が継続された唯一の民生向け短波受信機 EC-1 の広告が最後に掲載されたのが1945年10月号。 大戦が終結する直前からハリクラフターズ社は生産ラインをピースタイム転換し、 大衆向け低価格機EC-1をモデルチェンジしたEC-1AがQST誌1945年11月号で初登場します。 そのわずか3ヶ月後の1946年02月号で S-41 SkyRider Jr. が"New"と登場し、 しかしEC-1Aの広告は1946年05月まで続いています。 そして1946年06月号には ハリクラフターズS-38 がデビュー。 QST誌の広告を見る限り、EC-1Bというモデルは現れないのです。

QST 1945-10 p114 Echophone EC-1 $28.50
QST 1945-10 p115 Echophone EC-1 Radio Shack ad
QST 1945-10 p141 Echophone EC-1 1 page ad
QST 1945-11 p125 Echophone EC-1A 1 page ad
QST 1945-12 Echophone EC-1A 1 page ad
QST 1946-01 p125 Echophone EC-1A 1page ad
QST 1946-02 p111 "New" S-41 Skyrider Jr. $35.00
QST 1946-03 p123 Echophone EC-1A $29.50
QST 1946-04 p108 Echophone EC-1A $29.50
QST 1946-04 p105 S-41 Skyrider Jr. $33.50
QST 1946-05 p122 Echophone EC-1A $29.50
QST 1946-05 p142 S-41 Skyrider Jr. $33.50
QST 1946-06 S-38

    S-38の発売直前、1946年2月から6月の間の短い期間に販売された ハリクラフターズ スカイライダー・ジュニアS-41G/W は、実質的にEC-1Bと同一のモデルです。 違いはキャビネットおよびダイヤル盤の色、そしてつまみの形状だけ。 まずEC-1AがEC-1Bにマイナーチェンジされ、 つぎにそのリパッケージとしてS-41G/Wが市場投入されたのだろうと思っていましたが、 QST誌の広告を見ると市場投入のタイミングと広告の掲載と在庫と店頭販売はかなり混乱していたのでしょうね。

    エコーフォンEC-1A/Bは低価格モデルであったため、当時「貧乏人のハリクラフターズ」と呼ばれることもあったようです。 ある人がいっしょうけんめい貯めたお小遣いでエコーフォンを買い、 家に帰って箱を開けたらスカイライダー・ジュニアが出てきて飛び上がって喜んだ、という話も聞きました。

    いまQST誌の広告を見ると、EC-1Aは29ドル95セント、 スカイライダー・ジュニアは33ドル50セント。 中身の実質は同じなのにこの価格差は・・・ 戦後の急速なインフレと、ひょっとしたらその埋め合わせとしてのハリクラフターズロゴ使用だったのかもしれません。






回路構成

    エコーフォン コマーシャルEC-1Bは、 真空管を6本使ったシングルスーパーヘテロダインの中波・短波受信機です。 電源トランスを持たないAC/DCセット (日本でいうトランスレス方式)であり、 BFOとノイズリミッタ用に1本真空管が追加されていることを除けば、 家庭用の5球スーパーラジオと同じ回路構成です。

    EC-1Bの回路は、 後述するバンドスプレッド機構の違いを除けばEC-1Aと同じです。

使用真空管と回路構成
12SA7 メタル管:周波数変換用7極管 局部発振・周波数変換
12SK7 メタル管:リモートカットオフ5極管 中間周波数増幅
12SQ7 メタル管:双2極・高μ3極管 検波・初段低周波増幅
12SQ7 メタル管:双2極・高μ3極管 BFO / ANL
35L6GT GT管:ビーム出力管 低周波出力
35Z5GT GT管:2極整流管 整流





周波数変換

    アンテナからの信号はバリコンとRFコイルからなる同調回路で選択され、 周波数変換用のペンタグリッドコンバータ管 V1 12SA7の第3グリッドに入ります。
    12SA7の第1グリッドと第2グリッドは局部発振器を構成しており、 バリコンと局発コイルによってダイヤル位置に応じた局部周波数が発振されます。     アンテナ入力RF信号と局部周波数信号は12SA7の管内でミックスされ、 最初の中間周波トランスで両者の差の周波数が中間周波として取り出されます。 中間周波数は455kHzであり、 バンドAとBではアッパーサイドインジェクション、 バンドCではロワーサイドインジェクションになっています。
    12SA7はAGC制御を受けていません。


中間周波増幅

    455kHzの中間周波信号はリモートカットオフ5極管 V2 12SK7で増幅されます。 12SK7の出力から2つめの中間周波トランスで455kHz中間周波信号が取り出されます。
    この12SK7はAGC制御を受けます。
    フロントパネルのSTANDBYスイッチをOFFポジションにすると、 12SK7のカソードが切り離され、 中間周波増幅段が機能停止して受信機は無音になります。 このときも局部発振器とBFO発振器は動作し続けます。


AM検波

    V3 双2極・3極複合管の12SQ7の2極管部でAM検波が行われます。 2つの2極管プレートは並列接続されています。


AGC

    V3 12SQ7の2極管部でAM検波が行われた際に発生した、 キャリア振幅に比例した負のDC電圧がAGC電圧として使われます。 AGC電圧は中間周波増幅管のコントロールグリッドに印加され、 増幅ゲインを制御します。
    C.W. A.M.スイッチがC.W.ポジションにあるとき、 AGCラインはグラウンドに落とされてAGCは停止し、 中間周波増幅管は常時フルゲインで動作するようになります。


BFO

    C.W. A.M.スイッチがC.W.ポジションにあるとき、V5 12SQ7の3極管プレートにB電圧が供給され、 3極管はBFO周波数455kHzを発振します。 BFO周波数は固定で、シャシーのリアエプロンに設けられているトリマキャパシタで調整することができます。 BFO発振出力はグリッドから取り出され、 AM検波回路にキャパシタカップリングで注入されます。


初段低周波増幅

    AM検波出力は音量調整ポテンショメータを通った後に V3 12SQ7の3極管部で低周波増幅されます。 3極管のグリッドバイアスは10MΩのグリッドリーク抵抗で生成されます。

ノイズリミッタ

    初段低周波増幅の出力ラインにはV5 12SQ7の双2極管部を使ったノイズリミッタが入っています。 NOISE LIMITERスイッチがONポジションのとき、 オーディオ信号レベルが一定値を超えると2極管が導通し、オーディオ信号のピークをクリップします。
    BFO動作時は V7 12SQ7のカソードにはカソード電流×BFOコイルグリッド巻線の直流抵抗ぶんの電圧がかかっており、 よってノイズリミッタ動作開始のスレッショルドが高まります。 これが意図した設計なのかどうかは不明ですが・・・。

音声出力

    音声信号はビーム出力管35L6GTで電力増幅され、 出力トランスを介してスピーカを駆動します。 本機シャシーのリアエプロンにはヘッドフォン用の2極コネクタが用意されています。 プロントパネルのスイッチで内蔵スピーカを使うかヘッドフォンを使うかを切り替えることができます。
    35L6GTのグリッドバイアスは470kΩのグリッドリーク抵抗で生成されます。 本気の低周波増幅段にはNFBはかかっていません。


電源回路

    本機はAC/DCセットであり、すべての真空管のヒータは直列に接続されています。 AC115Vの電源電圧は2極整流管35Z5GTで半波整流されます。 電源の平滑は3段構成で、 3段めのB電圧は低リップルが求められる初段低周波増幅管のプレートと周波数変換管のスクリーングリッドに供給されます。



バンドスプレッド機構

    ハリクラフターズ・ファンのバイブル、Chuck Dachis氏著の <Radios By Hallicrafters> にはEC-1AとEC-1Bの差については記述がありませんが、バンドスプレッド機構が大きく異なっています。

    EC-1Aのバンドスプレッドは、メインバリコンと一体になったバンドスプレッドバリコンを糸掛けドライブで駆動し、 バンドスプレッドダイヤルの指針はバリコンのシャフトに直付けされています。これは後のS-38Cと同じ方式です。

    これに対しEC-1Bでは外観上は同じながら、 バンドスプレッドはシャーシ下のローカルオシレータコイルの中におかれたスラグを移動させる方式になっています。 バンドスプレッドつまみのシャフトとダイヤル指針のついたシャフトは糸掛けでつながれ、 またシャーシを垂直に貫通するシャフトを回します。 貫通シャフトはさらにシャーシ下面でスラグを往復させる糸掛けを動かします。 結局2連糸掛けになっているわけで、またそれぞれの糸掛けの途中にはロードスプリングが入っています。

    バックラッシュを含めたダイヤルの操作感からすれば複雑なEC-1Bは原理的に不利です。EC-1Aではフリクションロスは最低限であり、 指針がバリコン直結になっているためチューニング範囲を超えて回しても指針のずれは発生し得ません。 結果として糸掛けとしては最高にスムースなチューニングが可能です。

    ところがEC-1Bでは糸掛けが2連になっており、 貫通シャフトとスラグ往復部のアイドラローラの分だけフリクションが増加します。 さらに途中に入ったロードスプリングのため動作がダイレクトでなくなっています。 チューニング範囲を超えて無理に回した場合のダイヤル指針ずれの可能性もあります。

    この変更の理由は何だったのでしょうか? 標準的なバリコンを使うことによるコストダウンを狙った? それともひょっとして一時的にバンドスプレッド一体型バリコンの生産が間に合わなくなったための措置でしょうか。 後継機S-38 ではバンドスプレッド一体バリコンに戻されていますが、これはバリコンが入手できるようになったためなのか、 それともEC-1B方式の評判が悪かったためなのか、興味あるところです。




    EC-1B band spread is more complicated than EC-1A's, causing sluggish movement and spoils the fun of searching the signal.



ダイヤル盤の違い

    EC-1AとEC-1Bとでは、ダイヤル盤にも違いがあります。 すぐ気が付くところでは、バンドスプレッドの目盛りがその方式の違いから、 EC-1Aでは0から100までなのに対し、EC-1Bでは±50になっています。

    EC-1AとEC-1Bの違いで興味深いのは、アマチュアバンドの違い。 EC-1Aにはなかった21MHzアマチュアバンドが、EC-1Bでは示されています。 新バンド開放がいつだったのか? を合わせると、EC-1B市場投入のタイミングのミステリーをもっと楽しめそうです。

    EC-1Aでは1600kHz帯にPOLICEの表示がありますが、EC-1Bでは削除されています。


    外観上はこのほかに、 フロントパネルのスライドスイッチがEC-1Aでは黒色なのに対して、 EC-1Bでは赤色になっていること。 ただしこれはランニングチェンジの可能性もありますね。 赤色スイッチのEC-1A、あるいは黒色スイッチのEC-1Bがあるのかどうか。 ちなみに手元のS-41Gは黒色スイッチ。






現状を確認

    EC-1Bは外観的にはオリジナルコンディションを保っています。 しかしながらバリコンに堆積した埃とごみのためチューニング時にスクラッチノイズが出るなど、 全般的な清掃・調整が必要なようです。

    電源平滑用の電解キャパシタはやはり前のオーナーにより最近のものに交換されており、 とりあえず動作します。

    EC-1Aの背面パネルはベニア板製ですがEC-1Bは黒色のボール紙製。 このEC-1Bのボール紙パネルはすでによれよれになってしまっています。

1998-10-11 EC-1B 初期チェック







(ここで23年間のブランク)


動作チェック

    コロナ体制のリモートワーク環境として整備を始めた夢と時空の部屋、すこしずつラボとしての機能ができつつあります。 で、段ボール箱からEC-1Bが出てきたので動作チェック。 最後に電源を入れたからはや23年が経過しています。

    永い眠りから目を覚ましたEC-1Bがさいしょに受信したのはJOAK NHK東京第一、 第2回目の緊急事態を宣言する総理のスピーチが流れてきました。 いつまで続くんでしょう、 そしてこの先どうなってしまうんでしょうか。

    1998年にすでに出ていたチューニング時のスクラッチノイズは、 バリコンシャフトに接点洗浄スプレーを吹いてほぼ消えました。 あわせボリュームワイパーにも接点洗浄スプレーを吹いて、 EC-1Bはほぼ完調になりました。

    チューニングのバックラッシュはなく、 バンドスプレッドもスムース。 選択度も良好。 新型ペンタグリッドコンバータ12SA7を使ったスーパーヘテロダインはドリフトがほとんどなく、 ゆっくり短波を楽しめます。

    どうやらこのラジオは、 すくなくとも今の状態ならほぼ整備不要と見えます。 ふたたび段ボール箱にもどし、 点検作業は完了。

2021-01-07 動作チェック






> 次の作業・・・ アップルII Plus


調子はどうかな

    ついこの間動作チェックしたと思ったのにもう5年近く経っちゃったのか・・・ CRV-1 の整備が終わり、次はEC-1B。 動作チェックし、必要が見つかったらコンポーネントのリフレッシュを行おうかなという動機。

    KTWRグアム送信所の廃局を受けてオーストラリアの送信所からの放送となったフレンドシップラジオは15MHzタイの送信。 これが5球スーパーで聞けるか? というのが今回のチャレンジ。 まあきちんと整備された5球スーパーなら聞けるはずですが、 もうすぐラインオフ後80年経とうとしているEC-1Bではどうだろう。

    電源を入れたEC-1Bは当初バンドCが無感。 でもこれはバンドセレクタスイッチの軽度な接触不良と、 より重症なバリコンシャフトの接触不良。 これはしばらくダイヤルをくるくる回しているうちに回復し、 やがてバンドCも動作し始めました。



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診断

    キャビネットを開けて診断。 バリコン軸受にウェットタイプの接点清浄剤を噴射してノイズは快癒。 つづけていろいろテストしてみます。 一通りの動作はしているものの、 再調整は行ったほうがよさそうな状況にあることがわかりました。

  • 中間周波数は435kHzに調整されている
  • Band C: ダイヤル位置30MHzで28MHzが聞こえる
  • Band Cはロワーサイド・インジェクションになっている
  • 15.460MHzはダイヤル位置14.7MHzで聞こえる
  • 15.160MHzの強力な中国局はAGC電圧は-6.0Vまで下がる






  • 中間周波数調整

        435kHzにずれていた中間周波トランスの調整を行います。 AGC電圧測定用のフックアップポイントは右図のとおり。 シグナルジェネレータでつくった455.0kHzの信号をコンバータ管12SA7の第3グリッド 8ピンに注入し、 中間周波トランスを調整します。

        IFTは2つともC調整型で、 シャシー上面にトリマが出ているタイプなので作業は楽です。 結果、4か所のどれかが大きく狂っていたということはなく、 すべてが435kHzセンターに調整されていました。 それでも455kHzに調整しなおしたらAGC電圧にして50%感度アップしましたから、 多少は調整ずれがあったようです。

        BFOも435kHzにセットされていました。 リアエプロンの調整トリマを回して455kHzに調整。

        中間周波トランスもBFOも435kHzになっていたので、 前ユーザは正確な周波数源がないまま最大感度になるように調整作業を行い、 そのあとでBFOも合わせ直したのではないかなと推測します。






    トラッキング調整

        トラッキング調整を行います。 まずはダイヤルずれの大きなバンドCを合わせようとしましたが、 バンドCの局発トリマはいちばん締めこんでもダイヤルずれは解消できませんでした。 これはバンドスプレッドのコア位置がずれているものと思われますが、 バンドスプレッドの糸掛けには手を出さず、 局発トリマに並列に20pFのセラミックキャパシタを追加。

        ふつうは局発コイルのコア位置で低い周波数の目盛りを合わせ、 局発コイルに並列に入ったトリマで高い周波数の目盛りを合わせるわけですが、 EC-1Bでは局発コイルのコアがバンドスプレッド操作で大きく動いてしまう (しかも正確なセンター位置決めの仕組みはない) ために、 ダイヤル全域でぴったりとは合わせられませんでした。 ので、15MHz付近で目盛りが正確になるように調整。

        バンドCはRFコイルのトリマにも20pFを並列に追加しました。 RFコイル調整後、バンドCの感度はほぼ全範囲でアップ。 28MHz帯でも感度は良くないながらしっかり聞こえています。 5球スーパーならこんな程度、というところまで調整できました。

        ついでバンドBとバンドA。 大きく狂っていたということはなく、 パーフェクトとはいかないもののいい感じで調整できました。

        日曜夜、オーストラリア クヌヌラ送信所からの15.460MHzで放送されているフレンドシップラジオの時間。 5球スーパーでは15MHz帯はキツいかなと思いましたが、 とてもいい感じで番組を楽しむことができます。



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    接触不良の懸念を発見

        調子よく鳴っているEC-1Bですが、シャシー下の部品をあちこち綿棒でつんつんしていたら、 バンドBの局発パディングトリマのはんだ付けが接触不良を示していることがわかりました。 はんだ付けしなおして症状は消えました。






    キャビネット復旧

        EC-1Bはハムやノイズが発生することもなく1週間以上安定に動作しており、 当時物のキャパシタや抵抗の交換の必要性は発生していません。 いやーびっくり。 今回もこのまま作業完了にしましょう。

        スピーカはコーン紙が破れかかっています。 このキャビネット相応の音で鳴ってくれていますが、 ゆっくり番組を楽しむにはやはり良質な外部スピーカを使いたいところ。






    ファクシミリ受信を試す

        ファクシミリ受信を試します。 この受信機は周波数ドリフトが案外少なくて、 AM放送を聞く限りはいちど合わせた後のダイヤル操作はほぼ不要で、いい感じです。 が、ファクシミリとなるとさすがにそうもいかず。 16MHz帯の共同通信では、 数分おきにバンドスプレッドダイヤルをごくわずかに操作する必要がありました。

        7MHz帯のJMH2の場合、本機ではバンドCダイヤルのほぼ下端で受信することになります。 このため周波数ドリフト的には有利。 電源電圧に応じた0.1kHz以下の上がったり下がったりはありますが、 1画面を受像する間にダイヤルに手を触れる必要はほぼありません。

        独立したBFO管で発振したBFO信号をAM検波管にツイストキャパシタで注入する安価でシンプルなつくりの割には、 SSB音声の復調品質は良好。 同期も結構良好に取れます。 CRV-1 では内蔵BFOでのファックス受像はほぼ無理でしたから、 EC-1BのBFOとAM検波回路はいい仕事をしていると言えると思います。

    2025-12-12 ファクシミリ受信






    幻の2スイッチモデル

        スカイライダー・ジュニア のページにも書いたのですが、 EC-1BとS-41Gのシャシーのリアエプロンにはスライドスイッチ用ではないかと思える穴が用意されていて、 だけれど何も取りついていません。 これは長い間謎だったのですが、 今回EC-1Bのサービスマニュアルを読んでその理由がわかりました。

        手元には2つのEC-1Bサービスマニュアルがあります。 ひとつはJohn F. Riderの回路図で、December 1945の文字が見えるバージョン。 もうひとつはおそらくハリクラフターズ社発行のサービスデータ。 こちらには March 1946の文字が見えます。

        で、1945年12月のJ.F.Riderには、リアエプロンに PHONE-SPEAKER切り替えスイッチが描かれています。 と同時に、フロントパネルには2つしかスイッチがなく、 C.W.-A.M. と BFO ON-OFFだけ。 NOISE LIMITERスイッチはありません。 回路図を見るとたしかにノイズリミッタの結線はなく、 BFO管の12SQ7のダイオードプレートには何もつながっていません。




        どうやらEC-1Bの製品企画の段階で、 さらなるコストダウンのためにノイズリミッタ廃止とともにスピーカスイッチの移設が検討されたのでしょう。 でもスピーカスイッチそのものは減っていないし、 背面に移って不便になるだけ。 ノイズリミッタ削除はスイッチこそ減るけれど、 他に使用部品はなく、削減できるコストはわずか。 むしろアクセサリ機能がなくなって商品性はダウンします。 そんなの賢くないよ? と企画会議で案はボツになり、 結局EC-1Aのままの仕様に。

        1946年3月のサービスデータではリアパネルのスイッチ穴は描かれていません。 しかし実際にはEC-1Bのシャシー製造手配はすでにスピーカスイッチ取付穴付きで出図され、 シャシー加工型も穴ありで用意されてしまっていた、 といったあたりではないでしょうか。

        S-41Gは中身はEC-1Bそのものだから、 リアエプロンの穴もそのままなのでしょう。

        となると疑問は、 EC-1Bの初期生産ロットにはフロントパネルスイッチが2つしかないバージョンがあったのでは? ということ。 しかしネットでEC-1Bの写真を探してみると、 すべてにスイッチは4つあります。

        でもそれは生産数が極端に少ないからネットにも写真が出回っていないだけなのかも。 スライドスイッチが2個だけの量産試作機があったかもしれませんし。 もしスイッチが2個だけのEC-1Bがこの世に存在するとしたら、 それは生産数が少なくてプレミア物とされているS-41W ― 白いキャビネットのスカイライダー・ジュニア ― をはるかに凌駕する激レアラジオのはずです。




    (この図は筐体を上下さかさまのサービスポジションにしたときの見え方で描かれています)


        それとは別に、スピーカ接続用ワイヤ。 EC-1Aではシャシー上にコネクタが用意されていて整備時にはかんたんにスピーカがついているトップカバーを取り外せるのですが。 EC-1BもS-41Gもコネクタはなく、シャシー内部からワイヤが直接スピーカに伸びてつながっています。 そのため、トップカバーを外すときははんだこてを使ってワイヤをスピーカら切り離さなければなりません。

        これもコストダウンのためなのでしょうが、 EC-1Bのシャシーレイアウト図にはコネクタが描かれていて、 またEC-1BもS-41Gも回路図にはスピーカはコネクタを介してつながるように描かれています。 サービスマニュアルの改定は行わず、製造ラインへの直接の作業指示変更といった感じ。

        まあそんなドタバタ、あっても全く不思議ではないでしょうね。 なにしろどれも1945年から1946年にかけての製品。 第2次世界大戦が終結して半年も経っていないころのことなのですから。
       





    局発のドリフトを測る

        コールドスタートからの局発のドリフトを測定してみました。 幣ラボの慣例で15MHzでの測定。 15MHzを受信するには、EC-1BではバンドC、メインダイヤルはほぼ50%の位置にあります。 今回はダイヤルには手を触れず、 局発周波数の漏れを別の安定な受信機で受信してその周波数の変化をプロットしました。 室温は18℃スタート。結果は右図。

        電源投入後45分程度で周波数変化は落ち着き、 国際ラジオ放送を聞くならじゅうぶんな安定度になります。 ファクシミリを受信するなら1時間15分程度のウォームアップはほしいところで、 そのあとは室温変化と電源電圧の影響の変動になります。

    2025-12-14 局発周波数ドリフト測定






    イメージとゴーストに惑わされる

        21MHzを超える周波数でも国際放送があちこち聞こえていてこの5球スーパーはハイバンドでも感度がいいなあと思ってしまうのですが、 そうではなくてこの受信機はイメージとゴーストがかなり酷いようです。

        これはおそらく、実際に観察はしていないのですが、 局発の波形が歪んでいて高調波や低調波が含まれているのでしょうね。 ほとんど同じ設計のEC-1AやS-41Gに比べてもこの傾向は目立つので、 局発周りの点検をしたら異常が見つかるのかもしれません。 いまのところこのEC-1Bは「当時物のコンポーネントで動作している」のが見どころと勝手に思っているので深くは追及せず、 次の輪廻の課題にとっておきましょう。





    AM復調品質

        EC-1B、ラジオ放送の音質がとても良いです。 シグナルジェネレータで400Hz 100%で変調した信号を作って受信させスピーカ出力の波形を見てみるときれいな波形。 やはりAM検波段にノイズリミッタをもたないシンプルなAM検波回路だといい音がするんだなあ。






    自力でのFT8受信は絶望にすら届かない

        ファクシミリならときどきダイヤルに触れれば何とかなった周波数安定性も、 FT8が求める安定性には遠く及びませんでした。 ただの一度もデコードできませんでしたし、 たとえじゅうぶんにウォームアップを行い温度変化の影響を最低限にしたとしても、 電源電圧変動による、さらには機序不明の理由による小刻みな周波数変動は、 FT8のデコードなど望むべくもないものです。

        SSB電話やCW電信なら充分に実用的だった復調性能も、 FT8では絶対的に性能不足。 複数のチャネルの混変調があって、復調音はひどく濁ってしまいます。

        自力ではFT8デコードは不可能ですが、 シグナルジェネレータで作ったキャリアをアンテナ回路に結合して注入してやる方法ならばうまくいきます。 14MHz帯で試してみると、 ただちにニュージーランドとベルギー、 そして北アイルランドが入感してきました。 5球スーパー、すごいな。






    作業完了

        当初の目的だった15.460MHzのオーストラリア クヌヌラ送信所からのフレンドシップラジオ、 今夜もとても強力・安定に聞こえています。 内蔵スピーカはコーン紙が破れかかっていることもあって音量を上げるとビビリ音が目立ちますけれど。 今回の放送中に短い時間、バリバリと外来ノイズ。 すかさずノイズリミッタスイッチをONにしたら、 けっこうきれいにノイズが減りました。 音声の音質もすこし劣化してしまいますが、パルスノイズ環境下での了解度は間違いなくアップ。 EC-1からつづくEC-1Bのノイズリミッタ回路はこれ以上シンプルにしようがない簡易式ですが、 条件によってはけっこう効果があることを体感しました。

        今回の作業を開始してから、朝8時から深夜0時までの連続16時間動作を6日以上行ったのに、 コンポーネント劣化の兆候はとうとう発生しませんでした。 なのでこれで今回のEC-1Bの作業は完了にします。 当時物のワックスペーパーキャパシタで元気に鳴っているこのEC-1B、 ひょっとするとかなり稀少な部類に入るのかもしれませんね。



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    > 次の作業・・・ ラファイエット HA-230 通信型短波受信機



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