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Kenwood PWR18-2TP

Regulated DC Power Supply






保管室用の電源が必要だ

    2020年05月、コロナ緊急事態宣言の自粛要請の中、 第3研究所開設以来モノが増える一方でまったく立ち入れなくなってしまった中央研究所保管室の整理を行いました。 7日間の作業の後にワークスペースができあがり、連休明けからはホームオフィスとして使い始めました。 エアコンはついていないので夏場はほぼ利用できないでしょうけれど。

    ワークスペースができ、文書作成と資料閲覧用に イントラネット専用に設定したNoobow8200 WindowsXP も安定動作し始め、 軽作業も始められるようになったら、今度はここに電圧可変の実験用安定化電源装置がほしくなりました。 既存の電源装置の一台を保管室用として持ってきてもよいのですが、 3台あるメインワークベンチの電源は大電流対応が2台、ファンレスの小電流対応機が1台。 保管室ベンチでは小電流でよいのでファンレスのシリーズドロップ型電源装置がほしいなあ。

    と思って保管室のラックをみると、Kenwoodの安定化電源装置 PWR18-2TPがあります。 3系統の出力とデジタル電流電圧計をもち、リモート制御も可能な、ハンサムなルックスの安定化電源装置です。 スワップミートでジャンク扱いのタダ同然で手に入れたものの、残念、電源入らず。 ケースを開けて中をのぞいたものの簡単な故障のようには思えず、 部品取りにでもしようと思って取っておいたのでした。

    それからすでに8年、この電源装置は保管室でただ時の流れに身を任せていただけでした。 ひょっとしてこれを直して使えないかな。

2020-05-20 PWR18-2TP 修理作業開始




電源装置の電源回路

    電源ケーブルをつないで電源スイッチをONにすると、 フロントパネルは全く無反応。 ただのひとつのランプもつきません。 しかし電源ONのときに匡体後部からカチンとリレーの音がします。 完全に死んでいるふうではありません。

    M3スクリュを外してトップカバーを開けると、 大きな電源トランスと、電源回路基板が4枚、 それにフロントパネルの背面にマウントされた基板があります。 なんとも複雑な電源装置です。 ざっと目視で、使われている電解キャパシタの防爆弁のようすを見てみましたが、 膨らんでいたり内容物噴出していたりするものはありませんでした。 この製品はおそらく1990年代のもの。 使われている電解キャパシタは日本製のものでしょうから、 2000年代の製品よりは安心できますね。

    カバー内に管ヒューズがあって、3Aヒューズが使われています。 どうやらこれはAC100Vラインに入れられたヒューズである様子。 テスタで調べてみると導通はあります。 し、もしこのヒューズが切れていれば電源投入時にリレーの音がするはずはありませんので、 テスタで調べるまでもないのですが。



    たぶん電力出力部とおぼしき匡体後方からリレーの音がするのにフロントパネルが全く何も光らないというのは、 フロントパネルユニットに電源電圧が来ていないのかもしれません。

    匡体内の回路からフロントパネルユニットへの信号線の取り入れ部は、すべて貫通コンデンサが使われています。 さすが民生家電とは違いますね。 計測器・プロ機の香りです。

    貫通コンデンサを通過するケーブルのなかに、 ビニル電線を2本パラでつないだ、赤ワイヤのターミナルと青ワイヤのターミナルがあります。 これがフロントパネル電源取り入れ部だろうか。 本機の電源を入れ、その赤端子と青端子の間の電圧を見てみると、完全にゼロです。




    ここが本当にフロントパネルの電源なのかな? 配線を追いかけると、 フロントパネル電源はフロントパネル背面に取り付けられたプリント基板上に設けられています。 電源トランスからの巻線をブリッジで整流し、 電解キャパシタで平滑しただけの電源回路で直流にされ、供給されているようです。

    電源トランス巻線からのリードコネクタピン間には導通があるのでトランス巻線は断線していないようですし、 電源を入れてアナログテスタで電圧を見てみるとコネクタピン間にはAC10Vが出ています。 電源トランスは正常で、電源回路の故障のように思えます。 電源装置の電源回路の故障か。





    フロントパネル背面基板はいくつものオンボードコネクタで匡体内各部と接続されています。 コネクタ接続をあらかじめ写真に取っておいてからコネクタを切り離し、 フロントパネル背面基板を取り外しました。



    フロントパネル背面基板の下には7805 3端子レギュレータが隠れていました。 フロントパネルユニットカバーにネジ止めされていて、 フロントパネル背面基板から出ているハーネスとコネクタで接続されています。 あれまあ。 複雑で高級な電源装置の電源回路はかくもシンプル。



    基板のパターンを追いかけながら、素子をチェックします。 電源トランスの巻線は正常に思えるのに、電圧が出ない。 もしブリッジダイオードがショート故障していたら、 トランス巻線は焼ききれてしまうのではないでしょうか。 とすれば、ブリッジダイオードはオープン故障しているのかな。 でもその場合は、正のサイクル用のダイオード2本のうち少なくとも1本がオープンし、 かつ負のサイクル用のダイオード2本のうち少なくとも1本がオープンしているはず。

    アナログテスタで調べると、しかしブリッジダイオードの中の4本のダイオードは正常な挙動を示しています。 ブリッジダイオード後の平滑用電解キャパシタも、アナログテスタで見る限り正常に思えます。 では3端子レギュレータの故障でしょうか。 いままで3端子レギュレータが経時劣化で壊れたというのは経験がありません。 3端子レギュレータ出力側の発振防止用キャパシタのリーク故障、のほうがありえそうだなあ。 どれがそのキャパシタなのだろう。

    非破壊で簡単にできそうなほうからやってみましょう。 7805の無実を証明するために7805を別のものに入れ替えてみようと思ったのですが、部品ストックに在庫ゼロ。 あれえ、そんなのいくつもあると思ったのに。 困ったな、と思いきや、メインワークベンチのデスクの上にリード線つきの7805が1本転がっています。 なんと好都合な。




    この7805は、シリコンバレーのジャンク屋で二束三文で売られていた新品のInmacのインテリジェントプリンタスイッチに使われていたものでした。 RS-232CでつながったPC 2台で1台のセントロニクスパラレル接続プリンタを共有するための装置なのですが、 本来の用途に使うつもりは毛頭なく、 ケースを自作プロジェクトに流用しようと思って買ったのでした。 一度も電源を入れることなく、とても良質なマイコン搭載の基板を取り出して、これまた良質なケースを眺め、 何を作ろうかなと思い、そして25年間そのまま。

    1993年ころ、シリコンバレーに転勤する前に社内PCネットワーク構築にユーザ部門として携わっていたころは、 このInmac製のスイッチは日本国海代理店は情報システム部門向けの製品として10万円とか15万円とかの値札を付けて売っていたように記憶しています。 いくらなんでもぼったくりすぎだよなあと思ってはいましたが、 それが目の前で4ドル98セントとかで投売りされているのを見て、 新品を自分のものにして、かつ使うことなく臓物を取り出したときは不思議な感慨がありましたけどね。




    在庫品7805をつなぎ、フロントパネル電源出力端子の電圧を測ってみたら、 あれえ? DC10Vが出ています。

    なんでだろう。 ひょっとしてフロントパネルはDC±5Vで動作するのかな? シャシーグラウンドになっていて、赤ワイヤはDC+5V、青ワイヤはDC-5Vなのかもしれない。 電源回路基板のどこかでDC-5Vをつくるインバータが構成されているのかも。

    オリジナルの7805に戻してみると、フロントパネル電源出力はDC1Vしかありません。 やっぱり7805の素子故障だ。

    再度在庫品7805にしたら、今度は出力電圧はDC5Vになりました。あれれ?

    どうやらこれは7805をつなぐコネクタの接触不良のようです。 3端子レギュレータの3本のピンのうちNo.2ピンが接続されていない場合は、 電圧は3端子レギュレータを通過するのみで、電圧を下げる動作はしません。 DC10Vが出ていたとき、たぶん2ピンに接触不良が出ていたのでしょう。 7805のピンは酸化して灰色にくすんでいますし、 実際7805のコネクタの挿入力は軽く、 ターミナルの接触圧力はとても弱そう。 7805の素子不良に加え、 当初電源電圧が全く出ていなかったというのは、 7805の1ピンまたは3ピンのコネクタ接触不良が起きていたのでしょう。

    もともとプリント基板の穴に通してはんだ付けするために作られた7805のリード線に、 3ピンのコネクタを差し込んで使うこの部分だけは、 なんとなくアマチュア的なつくりに思えます。 コネクタターミナルに洗浄剤を噴射して抜き差しを繰り返したら接触は安定しましたが、 ここは7805にワイヤをはんだ付け直結してしまったほうがよさそうです。






The series regulator IC 7805 found to be defecive. Its connector had bad contact also. Replaced with a new 7805 regulator and directly connecting the regulator to the powersupply circuit, the Kenwood revived.

    さてこれでフロントパネル背面基板はDC5Vを出すようになったから、 フロントパネルの電源コネクタをつないで、電源スイッチをONにします。

    やったね! フロントパネルの5桁7セグメントLEDふたつにゼロが並び、 パネルスイッチの状態表示用LEDも点灯しました。 10数秒後、数値表示はおそらく正しい値を示し始めました。

2020-05-21 7805暫定交換 フロントパネル動作開始




放熱フィンの接地

    一日の在宅勤務を終えて作業継続。 7805を交換するだけでなく、接触不良の懸念のある (そして本来ではない方法で使われている) コネクタを使わずに、 7805とフロントパネル基板をワイヤーで直結してしまいましょう。 はんだごてを暖めて作業して、うん、フロントパネルは動作している。

    でもまてよ、ちょっと気になることが。 オリジナルの7805は7805Aで、放熱フィンはプラスチックモールドで覆われているので、 7805の2ピン (COMMON) は取り付け先のシャーシとは電気的にはつながりません。 いっぽう在庫部品の7805はトラディショナルに放熱フィンが金属で、2ピンのCOMMONに接続されているタイプです。 この電源回路のグラウンド電位と本電源装置のシャシーグラウンドの電位は同じなのだろうか。

    電源装置を動作させている状態で両者の電位差をアナログテスタで計ってみるとゼロです。 金属フィンタイプの7805を絶縁シートなしで取り付けてしまっても大丈夫でしょう。

    これは、私のいつもの使い方では、フロントパネルのGNDターミナルとCOM-ターミナルはショートバーでつないであるため。 もしこのショートバーを外して、電源回路のコモンの電位をシャシーグラウンド電位から浮かせて運用する場合は、 7805の放熱板を経由してこの両者がつながったままになってしまい、うまくないことが起こるでしょう。

    放熱板がプラスチックになっているタイプの7805が手に入ったら、 ちょっとめんどくさいけど再度交換したほうがよいでしょう。



稼働開始

    動作テスト。 3系統の出力でそれぞれ規定の最大出力電流を流せて、電圧制御も電流制御も安定していることを確認しました。 フロントパネルのプッシュキースイッチはおそらくマイクロタクトスイッチのようで、 いまのところすべてのキーが利きますが、接点酸化によるチャタも見受けられます。 なんべんかカチャカチャやっていればいいかな。

    本機はずっしりと重いのでさぞ電流が取れそうに思えますが、3系統ある出力はそれぞれ最大2A・2A・1Aであり、 大電流を必要とする機器の電源には向きません。 いっぽうで3つの異なる電圧を供給できるのだから2Aクラスのシンプルな安定化電源装置を3台並べているのと同じわけで、 テストベンチの電源装置としてとても具合がよいです。 もちろん本機では2系統の電源回路を連動して動作させるトラッキング機能も用意されています。 ハンサムなスタイルのフロントパネルはアルミ厚板をプレスで曲げて作られており、 その上にホワイトアイボリー塗装。 塗装強度は弱く、おそらく他の機器を乗せられたりしていたのでしょう、パネル上部では塗装が剥げてしまっています。 ここを美装するほどのことでもないかな。 これは歴戦のベテランの証ということにして、 のんびりと余生を保管室ワークベンチで過ごしてもらいましょう。

2020-05-21 修理完了 実働開始




> 次の作業・・・トリオ CO-1301 オシロスコープ


メモリ機能が働かない

    本機は夢と時空の部屋で快調に実験用電源として動作してくれていますが、 ちょっと困るのがメモリ機能が使えないこと。 本機には設定状態を3種類記憶できる設定メモリと、 電源OFF直前の状態を記憶しておいて次回電源ONでそれを復旧する機能があります。 ところがこの機能が働かず、 電源ONのたびに出力電圧や電流制限値を設定しなおす必要があります。 それに、電源スイッチを入れてからフロントパネルが操作可能になるまでに長い時間を必要とします。

    復活してから2年経過、毎回設定するのがやはり面倒になってきました。 メモリ機能の修理をしよう。

    このメモリバックアップ電源にはキャパシタが用いられていると説明書に書いてあります。 おそらくキャパシタ交換で修理できるでしょう。 ケースを開けて、どれがメモリバックアップ用のバッテリなんだろう。 フロントパネル制御回路用電源回路についているこの平滑キャパシタだろうか。 違うような気がするけれど、まあいいや、在庫部品はあるから交換しちゃえ。

2020-09-09 メモリ機能修理開始




    でもまあ、これじゃないよね。 電源スイッチをOFFにすればこのキャパシタのチャージはすべてフロントパネル制御回路が使い切ってしまうんだもの。

    フロントパネル制御ブロックを分解しました。 ここは2枚のプリント基板の2階建て構造になっていて、 1枚がフロントパネルの7セグLEDや動作状態表示LED、タクトスイッチ類が並んだユーザーインターフェスボード、 もう1枚がマイクロコントローラとPROMが載ったロジックボードです。 そのロジックボードの中央部に、 0.1F 5.5Vのスーパーキャパシタが取り付けられています。 これがメモリバックアップ用ですね、間違いない。

    でもラボにはスーパーキャパシタの在庫は一つもありません。 ニッカド電池で代替する技もありますが、 同等品が手ごろな価格で入手可能なようなので、 ひとつ注文することにしました。 まあ、一つでいいところスペア/ストックのために2個買い、 他にもこまごま在庫不足あるいは在庫がない部品をいろいろ買うので2800円コースです。

2020-09-09 制御回路用電源回路平滑キャパシタ交換 スーパーキャパシタ発注





    部品が届きました。 このお店 は古い部品主体で扱っており、 欲しい部品が確実にあるというわけではないのですが、 在庫があるならとてもリーズナブルで、梱包も丁寧。 とても好感が持てるショップです。

    スーパーキャパシタを交換。 ついでに他の電解キャパシタも交換しようと思ったのですが、 基板のスルーホールが小さくてちょっと作業性に難あり。 面倒になって1個交換しただけでやめました。

    フロントパネルのOUTPUTタクトスイッチには酷いチャタがあったので、 接点復活剤を隙間から内部に注入し、クリクリクリクリ繰り返しておきました。

    組み立てて電源ON。 出力電圧・出力電流を設定して、電源をOFFし、再度ONしてみると・・・ お、ちゃんと設定値が復旧する。 メモリ機能も使えるようになりました。 電源ONしてから使用可能になるまでの時間も短縮。 OUTPUTスイッチもチャタなくON-OFFできるようになりました。 やったね、修理成功。 ひきつづきがんばってもらおう。

2022-09-15 スーパーキャパシタ交換 メモリ機能復活 OUTPUTスイッチチャタ解消




> 次の作業・・・ ナショナルパナソニック RF-877


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