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Iwatsu SC-7202

Universal Counter


Iwatsu SC-7202


使おうと思ったら

    入手後はたして何年たっているのか、このカウンタ。 周波数を測定する必要性もなく何年も過ぎて、電源さえ入れずに放置していました。 夢と時空の部屋の整理作業の中でこれが出てきて、 電源プラグをつなぐと、あれ、なんかちゃんと動きそうだ。 段ボール箱から出して、追加して組み立て終わったラックに出しておいてあげよう。

    2021年08月、 RF-2200の修理 の時に周波数を測定したいと思って電源を入れたら、 む、起動してくれない。 何べんかスイッチのOFF-ONを繰り返したら起動しましたが、なにか様子が変です。 起動時の表示が遅かったり、激しくチラついたり。 RF-2200はとりいそぎBGMを聞くには十分な性能が出始めたから、 先にこの岩通を直してみよう。

2021-09-04 修理作業開始



バッテリを交換すれば直ると思ったのだけれど

    まずは電源回路を調べましょう。 岩通らしいニートなレイアウトのプリント基板の上には放熱板に取り付けられたパワートランジスタが3つあって、 シルクの表示からするにアナログ回路系の+5VDCと-5VDC、それにデジタル系用の+5VDCです。 それぞれのパワートランジスタのヒートシンクタブの電圧をテスタで見てみると、しっかりと安定した電圧が出ています。 電源回路は正常と判断します。

    以前にこのカウンタは中を開けたことがあって、ニッカドバッテリが内蔵されていて、 そのときは液漏れの兆候は全くなかったことは確認していました。 けど、バッテリがダメになっているのは確実ですね。 つぎはバッテリ電圧をチェック。 定格3.6Vのバッテリですが、0.5V。ふむ。だろうね。

2021-09-04 電源電圧正常




    もちろん電圧チェックに関係なく無条件に交換するつもりでしたから、 タブを基板に直にはんだ付けして取り付けられているバッテリをニッパで切り離して取り外しました。

    バッテリが取り付けられていない状態では全く起動しません。 バッテリの代わりに 安定化電源装置 でつくった3.6Vをつないでみたり、乾電池3本を使ってみたりしましたが、 起動しません。

    取り外したバッテリをみのむしクリップでつなぎ直して試すと、 たまに起動することがあります。 これはニッカドバッテリの劣化が原因ではないのかも。 ひょっとしてマイクロコントローラが正常に起動できていなかったりするのかなあ。

2021-09-04 ニッカドバッテリ取り外し



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    本機に使われているマイクロコントローラは、沖のMSM80C39RS、 インテル初の「マイクロコントローラ」8048のコンパチチップです。

    80C39は2ピンがクロック入力です。 ここの波形を つい先日修理を終えたばかりのテクトロニクス2230 で見てみると、 正常起動時はもちろん、電源を入れたが起動しないでいる状態のときも、 安定した5MHzのクロック信号が来ています。 クロックが来ているのにマイコンが起動できていないのだとすると、 リセット信号は正しく来ているのだろうか。

2021-09-04 プロセッサクロック正常




    80C39の4ピンの/RESET信号を見てみると、 電源投入後102.4ミリ秒の間、/RESET はLOWに保持されています。 正常な挙動でしょう。 これは正常に起動したときもそうでないときも同じです。 よって、リセット信号発生回路は正常と判断します。

    ところでこのリセット信号のような単発現象の観測、 古典的なオシロスコープで行うのは至難の業ですね。 デジタルストレージオシロスコープばんざい。

2021-09-04 リセット信号正常






VDD信号が怪しい

    沖80C39マイクロコントローラのデータシートを手に入れて読んでみると、 このチップは電源供給のVCCピンのほかにVDDピンがあります。 VCCが供給され続けているときでも、 VDDがLOWに落ちるとクロック回路が停止してマイクロプロセッサは動作を停止し、 ローパワースリープモードに入ります。 このときプロセッサの内部ステータスやメモリの内容は保持されていて、 VDDがHIに戻ると動作を継続再開するようになっています。 ふむ。 VDDはどうなっているのだろう。

    オシロで観察すると、 起動不能に陥っているときは26ピンのVDDは0.5Vほどしかありません。 プロセッサがスタンバイモードに入っちゃってるんだ!

    電源ON/OFFを繰り返すと、 正常に起動できた時はVDDは必ずHIになっています。 いっぽう、電源後VDDにとても高い周波数の矩形波が出ることがたまにあります。 このときは起動できません。 さらに、VDDがHIになったときでも直ちには起動せず、 すこし間をおいてから起動することがあります。

    VDD信号は明らかに怪しい。 けれどそのほかにも何かがありそうです。




    本機のオペレーションマニュアルのコピーが手に入りました。 サービスマニュアルではないのですが、幸いに回路図が掲載されています。 一見して複雑なこの機械の回路図を読み、 リセット信号回りの回路を抜き出してみました。 右図。 ほう、ほうほうほうほうほう。

    電源が投入されると、VCCとVDDがプロセッサに与えられるとともに、 電源投入直後は電源電圧監視ICによって一定時間の間リセット信号がプロセッサに与えられます。

    電源が切れるとVDDはゼロに落ちますが、 VCCは内蔵ニッカドバッテリからの電圧3.6VがR189 10kΩを介して与えられ続け、 マイクロコントローラはローパワースリープ動作を続けるようになっています。

    つぎに再度電源が入るとVDDがHIになりプロセッサは動作を再開しますが、 同時にリセットを受けます。 ここから先は推測なのですが、 プログラムのリセットルーチンはメモリをオールクリアするのではなく、 おそらくデータバリッドシグネチャバイトみたいなものがあって、 メモリ上のデータがスリープモード中も破壊されずに保持されているようであれば、 前回動作していたときの動作モードなどの情報は残したうえでシステム初期化を行うのでしょう。 これが本機のメモリバックアップの仕組みのようですね。

    ボード上の"CHECK"のジャンパーピンの働きもわかりました。 このジャンパーピンをCHECKにしておくと、電源OFFのときはバッテリバックアップは行われず、 VCCは+5VDC電源がそのまま与えられます。 このジャンパーをCHECKにしておいても起動不能の症状にはまったく影響を与えなかったのですが、 その動きも納得できます。





VDD異常の理由

    回路図から、いままでの動きの説明もつきます。

    ニッカドバッテリを完全に切り離した状態だと、 電源が入っても誰もトランジスタQ117とQ116をONしに行かないので、 VCCもVDDも供給されず、プロセッサは起動しません。

    バッテリとしての能力を失ってしまった古いバッテリをつないでいると、 バッテリ両端の電圧は定格3.6Vであるべきところが4.5V程度まで上がってしまっていたので、 Q117/Q116のベース-エミッタ電圧が 5 - 4.5 で 0.5Vほどしかなく、 トランジスタをONさせるのに必要な0.6Vを下回ってしまい、 VCCもVDDも供給されません。 乾電池3本で試したときは、バッテリ両端が4.5Vあったため、同様の結果。

    バッテリ両端電圧が4.3V程度の時は、 トランジスタONでバッテリ充電が始まる->バッテリ電圧が4.5VになりトランジスタOFF-> バッテリ電圧が下がりトランジスタがONする・・・を繰り返したのでしょう。 これが異常な矩形波発生の理由。

    それなら外部電源で3.6Vを与えたときは動作しそうなものですが、 おそらくそのときはまだ判明していないなにかほかの理由で起動できなかったのだと思われます。

    とにかく対策は、何を考えるまでもなく当然のことですが、 3.6Vの電池を取り付けること。 在庫の充電池を取り付けて、 VDD問題は解決しました。

2021-09-05 バッテリ交換 VDD挙動は安定





クロック信号

    VDD問題は解決したものの、やはり起動不能は発生します。 ただ起動直後にプロセッサの速度が落ちているかのような挙動はなくなりましたので、 それはVDD問題が起こしていたのでしょう。 いまは、「目覚めないことがある」「なかなか目覚めない」「」いちど目覚めればそのあとはすぐに目覚める」 「しばらく電源を切っておくとすぐに目覚めないことが多い」という観察です。

    VCCもVDDも安定に出るようになったはず。 リセット信号は当初から安定していた。 やはりクロック信号かな。 オシロをつなぐとやはり、 起動時にクロック信号が出ていなかったり、 出ていても挙動が乱れるケースが観察されました。

    本機のマイクロコントローラクロック生成回路を調べると、右図のようになっていました。 装置全体の基準時間信号として0.1us信号があり - これは10MHzでしょう - 、 それをフリップフロップで2分周して 5MHzのプロセッサクロックを、 さらに2分周して2.5MHzのディスプレイ・キーボードコントローラとオプションボードのクロックを作っています。

    このフリップフロップには汎用ロジックIC 74HC74が使われています。 これが壊れているとしたら部品入手は容易だし交換作業も可能です。




    テクトロニクス2230で基準周波数0.1usラインとマイクロコントローラクロック5MHzを観察しながら、 症状の発生を待ちます。 いちど正常になったらその後は1日ずっとOK・・・ということは、 温度が効いているのかもしれません。

    しばらく電源OFFしたのちに電源ONをなんべんか試したら、症状発生。 0.1usラインがフラットです。 分周回路は正常で、 問題は10MHz基準周波数発振回路にある。




    いろいろ試すうち・・・ そもそもこのユニバーサルカウンタの修理は、 ラジオを修理している途中で先行してやっている作業ですからね・・・、 本機が正常動作しているときは近くに置いたFMラジオで85MHzの信号が受信できることを見つけました。 右図のムービーでは、 本機が起動するとFMラジオのザーッという局間ノイズが消えてチューニングメータが大きく振れていることがわかります。

    85MHzなんて何の周波数だろうと思ったのですが、 何のことはないこれはプロセッサクロック5MHzの高調波でした。 FMラジオなら80MHzと85MHzで受信できますし、 短波なら5MHz・10MHz・15MHz・・・で同様に信号が受信できます。



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TCXOが起動しない

    0.1us信号を生成する回路を描き起こしてみました。 日本電波工業製TC314A 温度補償型基準周波数水晶発振器が10MHzの基準周波数を発生し、 その出力はトランジスタQ119 2SC1907で緩衝増幅されています。 バッファアンプの出力は0.1us信号となり、前出のクロック生成回路に行くほか、 この基準周波数をもとにしてカウンタの基準タイムベースをつくり、 また外部に基準周波数として出力する仕組みになっています。




    0.1us信号が出ないのは、はたして温度補償型水晶発振モジュール (TCXO) が動いていないのか、 それともバッファアンプが働いていないのか? オシロスコープをTCXOの出力と、バッファアンプトランジスタのベースにつなぎ、 観測してみます。 正常動作時の波形は右図。




    起動不能の症状がなかなか出なくなったので、 冷蔵庫から保冷剤を持ってきてタオルでくるみ、 TCXOの周りとTCXOの下のケース下側を冷やし、数時間放置。 その後にカウンタの電源を入れると、 案の定、一発で起動不能状態になりました。 スマホをセットしてカメラアプリを起動し、 発振が始まるその一瞬を撮影すべくムービーを撮影します。

    電源投入直後はTCXO出力もバッファアンプトランジスタのベースもまっ平の変化なし波形ですが、 10分経ったあたりからTCXO出力が0.2Vp-p程度で振れ始めました。 オシロのトリガはチャンネル1のバッファアンプのベースから取るようセットアップしていたので波形は観察できませんでしたけれど。 そして電源投入から約30分、 突然にTCXOが出力を始めました。

    カウンタは起動しなかったので、 電源をOFF-ON。 今度はすぐにTCXOが出力をはじめ、そしてカウンタは正常起動しました。

    原因最終確定。 日本電波工業製温度補償型水晶基準信号発振器の発振停止。

2021-09-06 TCXO発振停止を直接波形で確認



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一度目覚めさえすれば

    ということで、いったん目覚めれば計測器としては安定に使えることがわかったので、 清掃してケースを閉じて実用計測器として復帰します。 整備後の初仕事は RF-2200 の短波第2局部発振周波数の測定。

    この機械が故障廃却品の扱いだったのは、 ひょっとすると冬寒い時期に朝一番で電源が入らないという症状が出たからなのかもしれません。 だとすると、いまは9月で室温は27℃以上ありますが、 冬になると起動不能が頻発するようになるかな。

2021-09-06 作業いったん完了 実戦復帰





新品のTCXO

    そのうちどのみち交換することになるだろうからと、 10MHz水晶基準周波数発振モジュールをひとつ新品で買いました。

    中華製のモジュールをちいさな基板に実装しただけのこの発振モジュール、 例によって説明書やデータシートのたぐいはまったく付属してきませんでした。 が、同じモジュールメーカーの同等品のデータシートが見つかり、 テストしたところ調子よく発振しはじめました。




    電源はDC5V、出力はTTLレベル。 取付方法は工夫する必要がありますが、 電気的にはそのまま交換可能でしょう。

    オリジナルのTCXOはまだなんとか動いていますので、 このさきいよいよ起動不能が酷くなったら交換することにして、新品部品在庫として保管しておきます。

    でもまあ、 次に自分の心臓になるはずの10MHz基準発振器の周波数を自分で測定しているカウンタの絵ってちょっとなにかシュールな気がしますね。

2021-09-08 ROJON製 新品TCXO購入&テスト





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TCXO交換

    9月中旬、涼しくなってきたせいでしょうか、数日間連続して、朝SC-7202は起動しません。 電源スイッチをONのままにして放置し、30分かそこら経ってたら見るといつのまにか起動していたりします。

    周波数カウンタなんて常時使うものでもありませんが、 だからこそ使いたいときにすぐ使えないというのはけっこう痛いです。 やはりTCXOを新品に交換してしまいましょう。

    再びケースをあけ、さてメイン基板はどうやって外すのだろうと見たら、 なんと、コネクタを2個外すだけで工具不要でメイン基板はケースから外れるのです。 どうやら上下のケースで挟んで固定しているだけと見えます。 すばらしい整備性だ。

    オリジナルの日本電波工業のTCXOと、今回買ったROJONのTCXOは、 外装サイズは結構違いますが、 4本のピン配置はピンアサインもピンピッチもまったく一緒。 そのまま置き換えが可能に見えます。 しかし今回買ったものは小さなプリント基板にすでに実装されています。 はんだシュッ太郎を使って取り外してみようとしましたが、 ちょっと手こずりそう。 はんだシュッ太郎はかなり温度が高いので部品にダメージを与えてしまう可能性も高いので、 無理に外さず、ピンヘッダからリードワイヤを飛ばしてつなぐことにしました。

    メイン基板への取り付けは、ジャンク箱を見たらドライバーを買ったときにポップ用台紙に固定するためのプラスチック小物がちょうどいい台座として使えそう。 これを使って、両面テープで固定しました。

    基板を戻して、電源ON。 SC-7202は一発で動作を開始しました。





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    取り外した日本電波工業TC-314Aのシールドキャンを外して中を観察しました。 トリマ調整用の開口部付近の内部電極にけっこうコロージョンが見えます。 顕微鏡として使えるカメラを持っていないので若干不鮮明ですが、 電極パッド間をショートしているようなマイグレーション様のコンタミが見られます。 このあたりが今回の発振開始せずトラブルの原因だったのでしょうか。 だとすると、トリマ開口部を調整後シールでふさいでおけば、寿命は結構伸びたのかもしれません。





    TC-314Aの単体発振出力をオシロで見ると、プラス1.2V 〜 マイナス2.8Vほどの間で振れているように見えます。 これが正常状態だとすると、出力は0 - 5V のTTLレベルではないのですね。 今回使ったROJONのTCXOは 0 - 5V のTTLレベル。 電圧レベルは違いますが、前述の回路図を見ればわかるとおり、 TCXO出力はキャパシタでカップリングされていてバッファトランジスタを介しますから、 問題なく動作するでしょうし、実際大丈夫なようです。 おっと、そうか、このトランジスタはバッファというよりも、 10MHz信号の波形レベルをTTLレベルに変換するのが主目的なのかもしれませんね。

    先ほどまで自分の心臓だった基準信号発振モジュールの周波数を、 新しい心臓を取り付けられたSC-7202が測定しているというのは、 これまたシュールな絵面に見えます。

    とにかく、これで修理完了!

2021-09-18 TCXO新品交換




    コロージョン部をハブラシで磨き、すくなくともパッド間をつないでいるような生成物は除去して、 TC-314Aをテスト。 一晩寝かせた後に朝一番一発で発振開始、 佐久のKOKO'sふぁくとりーさんちでおいしいお茶をいただいて4時間後に戻ってきたあとも一発で発振開始。 ひょっとしたらパッド間のコロージョン/マイグレーション生成物が原因だったのかなあ、 だとするとTCXOを新品交換する必要はなくて 「ハブラシで磨けば直る」故障だったのかもしれません。

2021-09-19 TC-314A ブラシ掛け後 正常動作する





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